5本の薔薇 Ⅰ (ページ10)

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もう、何度か"魔獣注意"の看板を見てきた。お婆さんの言っていた2時間はもう既に過ぎている。

"一本杉の下の一軒家に住んでいる夫婦は道案内をやっているんだ。彼らの眼鏡にかなえば会場まで案内してくれるよ"

そう言っていた、お婆さんを思い出す。

｢！見えたぞ｣

クラピカのその声に顔を上げると、お婆さんの言った通りに一本杉の木の下に一軒家があった。

"静かすぎる"

辺りもこの家も物音1つしない。返事がなかったため、レオリオが扉を開いた。

｢！？｣

中では傷を負った人が2人と魔獣が1匹、私達と対峙していた。

私以外の3人が構えた時、魔獣は女性を連れ走り出した。私は魔獣の腰に手を回した。

｢A！？｣

誰かの私を呼ぶ声が聞こえた、多分クラピカだろう…

"また、何か言われる…"

心の中でため息を吐きつつ、私は魔獣に話しかけた。

｢あなた達の試験はこんな感じなんだね｣

｢何を言っている？｣

｢私達が着いた時、物音が1つもしなかった。なのに部屋に入った時、家具は崩れ女性は捕まっていた。悲鳴も、男性の声すら聞こえなかった｣

｢話せなかっただけかもしれないぞ？｣

私の言葉に魔獣は問いかける。

｢私、人より耳が良いんだよ。部屋に入る前まで人の形をした女性と男性は呼吸も脈も乱れてなかった。それは"安心していた"ともとれる。あなた達本当はカゾクかなぁ？｣