5本の薔薇 Ⅰ (ページ5)

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船に戻ると私はフードを被り直した。

｢それは、目を隠すためか？｣

ある事がきっかけで変わることが分かってから、私は、顔を隠すようになった。そして、緋の目ほど知られてないにしろ狙われる可能性があるとあの人に言われたからだ。

私はクラピカの問いかけに頷いた。

｢下では眠れないだろう｣

そう言うクラピカの提案で近場にハンモックを吊るしてその上に乗った。船の中はハンター試験を受ける大勢の男達で埋め尽くされていた。当然、女の人は見当たらない。

"試験会場に着いたら、いるのかな"

そんなことを考えつつ、私は紙袋を開けた。1口より大きめに切られたパンを持ち少しずつ食べる。1切れ食べ終わる前に、私はまた呟いた。

｢めんどくさい｣

今度は食べることがめんどくさいのだ。私は殆どのことをその言葉で完結させてしまう癖があった。

"師匠もめんどくさい人だったなぁ"

ふと思い出した、金髪を2つに結った少女を思わせる顔と体型。初めは私と同じくらいの子だと思っていた。

"でも、あれで強いから文句は言えない"

"いっぱい食べないと大きくなれないだわさ"といつも言われていたのを思い出す。私は残りのパンを口に詰め込むとゆっくりと咀嚼した。

全てのサンドイッチを食べ切る頃には船は出航していて、私は隣で眠るクラピカを見てから、目を閉じた。