5本の薔薇 Ⅰ (ページ26)

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暗闇に慣れると見えてきたのは1つの扉だった。扉の上に書かれているのは"1本道"とだけ。どうやら進むしかないらしい。

扉を開け、進むと狭い1本道が続いていた。次の扉まで歩いていく。

"クラピカたちも無事だといいなぁ"

扉に差し掛かった頃そんなことを考えていた。扉の向こうからはカンカンと何かを叩く音が聞こえている。なにかがいるのは確かだった。

私は静かに扉を開ける。そこに広がった光景に目を見開いた。

そこには、綺麗に用意されたであろう料理と私のようにフードを深くかぶった男が立っていた。

"この場所に相応しくない"

｢君のことは知ってるよ｣

そう話し出す男を見つめるとあることに気がついた。どこかで見た事のある、そして、聞いたことのある声だった。

｢足元をよく見てごらん｣

そう言う男の言葉通りに足元に視線を送る。ヒュッと喉が鳴ったのが分かる。足元に広がっていたのはこの部屋に似つかわしくない血の海だった。瞬時に私の瞳の色が変わっていく、男はそれに満足したように笑った。

｢まずは、料理を食べよう。食べないと力が出ないだろう？｣

そこで初めて気づく、人間が食べる料理ではないことに…

男は拳大の肉の塊にフォークを突き立てた。勢いよく血が飛ぶのが見えた。

｢君のために用意したんだ｣

そう言って口に持っていくものが何かが分かって、私は息を呑んだ。