5本の薔薇 Ⅰ (ページ16)

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見覚えのある後ろ姿が見えたと思ったら、キルアとレオリオが話し始めてしまった。

｢A、そんなとこにいたのか。心配したぞ｣

クラピカに至っては、親みたいなことを言う。私はキルアに一言伝え、スケボーを降りた。クラピカの隣に並ぶ。

｢キルアと親しくなったんだな｣

心做しかいつもより、声が低い気がする。

｢はい、試験が始まるまで話してましたから｣

｢私にも…｣

クラピカがそう言って留まってしまった。続きが聞こえないことを不思議に思った私は、クラピカの耳元に自分の顔を寄せた。

｢まだ、話してないですよ。大事なことは｣

そう、耳元で伝えるとクラピカは面をくらったようにこちらを見た。そして、色の白い肌が少し赤くなったような気がする…

"暗いからよく顔が見えないな"

深呼吸をしたクラピカが、私を見た。視線に気づいた私はクラピカの方を向く。

｢私にも言葉を崩して話してくれないか｣

そう言うとクラピカは視線を前に戻した。声もいつの間にか戻っている気がする。

"なんだ、そんなことか"

私は気づかれない程度に微笑むとクラピカの服の裾を引っ張り、自分に意識を向けた。

｢うん、わかった｣

私の行動にクラピカは優しく微笑んだ気がする。