町の青年〜ゆくえ〜

友達付き合い ページ11

静香を遠ざけた俺は、もう明るく振る舞う必要もなくなった。人間関係は面倒だ。俺はここに来たばかりの頃のように、回りとの関わりを最小限に減らした。
新と静香は付き合い始めたのだろう。
新の様子を見ているとわかる。いつもと違う。
新は俺の気持ちを知っていてか、この事を隠している。
俺は新のために身を引いた。だったらいいじゃないか。願っていた通りになったんだから。
俺は自分に嘘をついてでも、こう思おうとした。静香を好きな気持ちが、まだはっきり残って、離れないから。
静香は新を好きではなかった。
俺のことも好きではなかった。
静香の気持ちを知りたいのに、俺も、新も、自分のことしか考えてないんだ。
新や静香に心配をかけないようにするためにも、学校へは休まず通った。静香とは「友達」になった。うまくおさまったんだ。

「静香、今週の土曜、幼稚園の同窓会だって。お前行く？みんな覚えてなんかねぇーのにな」
「そうなんだ。行く。ありがとう。」
「場所とかは後でメールする」
俺は静香と話せることが嬉しくて、顔を見られないように、それだけ言って教室を出た。
このとき、新は教室にはいなかった。

「新、次の土曜、お前のカノジョ借りる。」
「は？カノジョって誰…」
「静香！付き合ってんだろ？
　別に何か二人でするとかじゃねぇから。
　幼稚園の同窓会。」
新は余裕の表情で、いいよ、と言った。
それだけ。と、俺はこれ以上は聞かなかった。

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