【WT→MHA】菊地原成代主と弾バカがヒーローを目指すNO.4 (ページ42)

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(天喰環視点)

菊地原さんはやはり優しかった。

「では、このクッキーを受け取ってもらえますか？」

「う、ん……よければ、ぜひ…でも、いいのか？その…友達にあげる予定だったと…」

「まだまだたくさん作ってあるので、大丈夫です
…ぼく、個性の影響で大食いなので」

大食い…そうなのか…菊地原さんについて一つ知れただけで嬉しくなる。

「俺、も……っ、個性がら……大食いでは、ないけど、色々食べる必要が、ある…」

「そうなんですか、お互い食には苦労しますね」

俺、今、菊地原さんと会話してる…。
ぐっと幸せを噛み締める。

「では、味には一応、自信があるので…でも、手作りなので早めに食べてください」

「あ、ありがとう…」

菊地原さんの手作りクッキー…。
思わず両手で受け取ってしまう。
嬉しい。早く食べたい。でももったいない…。

「じゃあ、ぼくはこの辺で…」

「あ、待って…！」

菊地原さんが去ろうとするのを呼び止める。ハンカチ、返さないと。
ずっと、あの日から汚さないように、ポケットに入れていた、ハンカチ。

「は、ハンカチを……」

「え？……あぁ、あの時の…」

「返したくて……」

ポケットの上から、握りしめる。
そう、返さなくてはいけない。

でも、返してしまったら、もう、彼女に会えないのでは？
だって、接点なんて、同じ高校の先輩と後輩というだけ。

ポケットを握る力が強くなる。

「返し、たかったんだ、けど…今、持ってなく、て…」

嘘を、ついてしまった。

「そりゃ、持ってたらびっくりですよ」

菊地原さんがクスリと笑う。
あ、今度は、見れた。

元々下がり気味な眉が、もっと下がって、まるで困ったみたいな、笑顔というよりも、微笑みに近い、わずかな表情の変化…。

「気にせず捨ててくださってよかったのに…」

「ダメだ、か、返したい…！」

「……天喰先輩、携帯持ってます？」

少し考えた動作のあと、菊地原さんが尋ねてきた。
俺は慌ててスマホを出す。

「連絡先を交換しましませんか？
ぼく、今仮免許試験前でバタバタしてて…3年生の予定も分からないので、お互い都合の合う時間にまた会いましょう」

これは夢だろうか。

もう一度頬をつねった。痛い。

気づけば菊地原さんと連絡先交換して、寮に戻ってきていた。

白昼夢？…手元にはクッキーがある。
…美味しい。ジワリ、幸せな気分になる。

ミリオに見つかりクッキーをせびられたが俺が貰ったんだから一つもあげない、と死守した。