【WT→MHA】菊地原成代主と弾バカがヒーローを目指すNO.4 (ページ41)

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(天喰環視点)

「いえ、無理をさせてしまってすみません」

菊地原さんの申し訳なさそうな声に焦る。
違う。
たしかに緊張しているけど、俺はずっと、君に会いたかった。

「む…むり、じゃない、…ただ、この前のお礼を…ちゃんと、した、くて……」

「そんな…あれはぼくの勝手なお節介ですから、気にしないでください」

どこまでも優しい。
それでいて、やっぱり、落ち着く。
おかしな話だ。

こんなに心臓は緊張しているのに、彼女の声をもっと聞いていたいと思うし、側にいたいと思う。
いつもの暗い考えはなりを潜め、どうにか仲良くなれないかなんて烏滸がましいことを考えてしまう。

「元気そうで安心しました」

「お、おかげさまで…ありがとう」

彼女のアドバイス通り、緊張してもしっかり食事をとるようにしていたら自然と胃痛は治った。そもそも、個性の関係上食べなければいけないのに今まで何をしていたのかと自分に呆れる。

その時、自分のお腹が小さくぐぅ、と、音を立てた。

空腹。

小さな音だったが、耳の良い彼女にはよく聞こえたことだろう。
なんせ、胃液の分泌の音すら聞き分けてみせたのだから。

「あ、これは、その……っ」

しまった、さっきまで訓練をしていたからだ。恥ずかしい、顔に熱が集まる。
何て誤魔化せばいいのか分からずオロオロと両手を彷徨わせてしまう。

すると、小さな笑い声が聞こえた。

決して、馬鹿にするようなものではなく、優し気な…。
思わず菊地原さんを見ると、無表情に戻っていた…笑うところ、見たかった、な…。

菊地原さんはこちらを向いておらず、手に下げていたトートバッグの中身を漁って、何かを取り出した。

「これ、友人にあげる予定だったクッキーなんですが、よければ食べてください」

「……えっ」

「あっ、もちろん、アレルギーがあったり、手作りが受け付けれなければ無理にとは…」

「あ、ほ、…ほしい！」

クッキーを差し出された手を、思わず掴んでしまう。
…触ってしまった。

「あっ、ぁ、ご、ごめんなさい、けして、その、セクハラなんかじゃ…」

慌てて手を放し弁明する。寧ろ怪しい。ダメだ…ヒーローになる前に前科一般…お先真っ暗……。

「天喰先輩、落ち着いてください、大丈夫ですよ

…まだ2回しか会っていませんが、天喰さんが人見知りなのは十分に分かりましたから
緊張していると、つい咄嗟に動いたりしちゃいますもんね」

……菊地原さんはフォローの天才なのだろうか。