【WT→MHA】菊地原成代主と弾バカがヒーローを目指すNO.4 (ページ30)

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(緑谷出水視点)

「い、いやですわ、わたくしったら…今一番辛いのは士郎さんなのに…すみません、すぐ、止めますからっ」

八百万さんの言葉とは裏腹にポロポロと涙が流れる。

「なん…で……」

菊地原さんは呟くと、目に見えて狼狽しだした。

「ちょ、っと、出水さん、なんとか、してくださいよ」

「えっ、俺？」

「あんたそういうの得意でしょ
なんで泣いてるのか、知らない、けど…

その女が泣いてると、ムカムカする

あんたらも、なんでそんな、心配そうな心音で……ぼくを、囲むんだよ…」

そう言った菊地原さんの顔は、どこか辛そうで。

「え…士郎、さん？」

「……っ、うるさい、名前、呼ばないで……なんだよ、これ…頭、痛い……」

菊地原さんはそういうと頭を抑えうずくまり始めた。

「士郎さん？！」

「……っ、ナースコール押すか？！」

「うる、さい…っ」

どうしよう、これは記憶が戻る前兆なのか？そんな、奇跡的なことって…寧ろ、悪化したりしたら？！

僕達は焦る。
医者を呼ぶべきなのか、みんな苦しむ菊地原さんを見て戸惑う。

その時だった。

病室に、丁寧な2回のノックオン。

「すまない、菊地原の病室はここであっているだろうか」

どこかで聞いた事のある、声…。

「……、風間、さん？」

菊地原さんが小さく呟いた。

「失礼」

入ってきたのは、NO3ヒーロー、ベストジーニストだった。
突然の有名なヒーローに全員驚く。

「他にも見舞い人が居たのか…気が利かず申し訳ない
君が記憶喪失だということは聞いている
私は先日、君に助けられた者だ」

目を見開いてベストジーニストを見つめる菊地原さん。
そんな彼女に、ベストジーニストは話しながら、お礼を言う。

「見舞いに花を持ってきたのだが……」

ベストジーニストから差し出された花を、呆然とした表情のまま菊地原さんは受け取り、そして、泣いた。

「あぁ……そうか、…そういうことだったのか…………

…緑谷、麗日、飯田、上鳴、瀬呂、切島、常闇、芦戸、葉隠、口田、砂藤、轟、耳郎、尾白、障子、峰田、梅雨ちゃん…百、公平

…みんな、キツイこと言ってごめん、はは…こんな簡単で、大事なこと……忘れてたなんて…

……今日は来てくれてありがとう」

菊地原さんは、一人一人に目を合わせて名前を呼んだ。

あぁ、奇跡って、あるんだな…。
八百万さんが、泣きながら菊地原さんに抱きつく光景をただ、見ていた。
気づけばみんな、伝染するように泣いていた。