【WT→MHA】菊地原成代主と弾バカがヒーローを目指すNO.4 (ページ27)

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(緑谷出水視点)

神野区での事件と、オールマイトの正体と実質ヒーロー引退のニュースは世間を騒がせていた。
また、あれだけの被害を出しておきながら、死者は0という奇跡も大きく報道された。

あの事件の翌日、菊地原さんのお見舞いにクラス全員でいこうという事になった。

病室に入ると、一人用の部屋で、少し大きめに場所が取られている。

「あぁ…みんな来てくれたのか」

出水くんは、菊地原さんのベッドのそばの椅子に座り、彼女の手を握っていた。

「医者が言うにはもうそろそろ薬も抜けて、目が覚めるって朝の時点で言われてたんだけど…もう昼なんだよなぁ…」

まぁこいつ低血圧だからしゃーねぇかと笑う出水くんの顔に、覇気はない。
それでも、僕達を暗い雰囲気にさせまいと気を使ってくれているのが分かった。

菊地原が寝ているベッドの周りを囲むようにみんなで近づく。
……腕につながれたチューブに呼吸器、包帯やガーゼが痛々しい。

「士郎さん…」

八百万さんが苦しそうに菊地原さんの腕を撫でた。

「案外みんなで騒いでたら目覚ましたりしてな！」

「菊地原の事だからうるさい、が第一声だと思うぜ、俺」

「えー、士郎ちゃんならお礼言ってくれるよ！」

「ケロ…心配かけたこと謝ったり…」

「士郎女子には優しいけど男子にあたり強いからな～」

「男女差別反対！」

いつもの雰囲気を保とうと、みんな気を使ってる。
出水くんもそれに気づいて笑ってくれた。

「……ッ」

しばらく菊地原さんについて話していると、本人が小さく何か呟いた。

「っ、士郎？！」

「士郎さん……！」

出水くんと八百万さんがいち早く気づき覗き込む。
クラスメイト達も、心配そうにその顔を覗き込んだ。

少しまぶだが震え、ゆっくり、薄くだが、目が開かれる。
特徴的な下がり眉に、黒い瞳。

出水くんはナースコールを押していた。
恐らく意識が戻ったら知らせるよう言われていたのだろう。

みんなが次々に声をかける。
焦点の合ってなかった目が、やがて落ち着き、周りを見渡した。

「……、…誰？」

菊地原さんの言葉は、小さく、でも、それは全員に大きな衝撃を与えた。

「…！？士郎、まさか記憶が…っ」

「……、出水さん…？…あぁ、出水さんの、知り合い…」

「……！！」

出水くんの顔が、蒼白になる。

「……悪い、みんな、今日は…帰ってくれるか？」

出水くんの震える声に、みんなは何も言わずに従った。