【最.俺】狂気の王国成長記録【ガレキ牛、ア.ブ】 (ページ3)

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割と優しい猫。ページ3

(カノコ視点)

日が高く登り、そして少し傾きかける、そんな時間。
この村の農作業は、大抵朝日が昇ると同時に始まり、夕方と呼ばれる時間よりも早くに終わる。

街灯なども無く、小さな自警団しか持たない村にとって、夜ほど危険なものはないからだ。
と、いっても、もう何年も魔物が村を襲うなんて事件は起こっていないらしいが、用心するに越したことはない。

私はいつもの場所に早く辿りつきたくて全力で走る。
障害物なんて何もない。
あるとしたら家畜を逃さないために設置されている柵程度。

それらもひょいひょいと乗り越える。

時折すれ違う村の人達が「あらカノコちゃん、今日も元気ね」なんて言葉をかけてくれているが、最後まで聞かずに駆け抜ける。

もちろん、「こんにちは！」と返事はしているが、相手には最初の方しか聞こえていないだろう。

「到着！！……まだ誰も来てない…ってことは、私が一番乗りだ！」

いつもの集合場所に着き、肩で息をしながら辺りを見渡すが、人影はない。
そう思ったところで、足音が聞こえてきた。

「だぁーっ！！チクショウ！カノコが先かよ！！」

「あはは、たまには勝たせてくれても良いじゃん」

「うっせ！俺は負けるのが
嫌いなんだよ！」

言葉とは裏腹に楽しそうに笑いながら、元気に叫んでいる彼は幼馴染のキヨだ。
私とキヨは、仕事の終了時間が分からないにも関わらず、こうして待ち合わせ場所に来る時間を二人で競い合っている。

キヨは先ほどの私と同じように辺りを見ると同時に、人間の耳とは違う、特徴的な三角形のふさふさの耳が揺れた。

キヨは猫の亜人だ。獣人は大抵高い身体能力と五感を有していて、キヨも例外ではない。
現に、私と同じぐらい全速力でここまで走ってきたはずなのに息一つ乱していない。
少し悔しいが、これからもっと鍛えていつか体力的にも抜かすから問題ない。

因みに、この村では実は人間の方が少なく、キヨの様な獣系の亜人が多い。
勿論例外もある。

「あれ？フジのやつまだ来てねぇの？珍しいな」

「ね、いつもならこの時間にはもう来てるのに」

そう、その例外が、もう一人の幼馴染であるフジの事なのだが…。
彼は待ち合わせ場所の直ぐそこに住んでいるので競走の対象外だ。
実際、いつも一番に待ち合わせ場所に来ている。

必ずという訳ではないが…。

「…ちょっと様子見に行こう」

「…おう」

まぁ、心配にはなる。