和泉守兼定 ページ3
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＿＿元治元年6月5日
京都に着いて早速、新撰組が池田屋に突入していくところを俺たちは見守った。そこに、俺の元主、土方歳三はいないけれど。
新撰組局長、近藤勇を筆頭に隊士が次々と中へ入っていく。池田屋の向かいの家の屋根から見ていた俺たちは、それぞれ思いを抱いてそれを見守っていた。
「ねぇ、何か、沖田くんを助ける術はないの……」
「安定……」
安定は少し混乱しているようで、清光のとなりで崩れ落ちた。隊長、陸奥守は何も言わず、新撰組の突入を見ていた。陸奥守だけじゃない。皆、何も言えなかった。
四国屋から戻り、池田屋に突入しようとするトシさん率いる組が、池田屋に入ったところで、その気配は強くなった。
「来る！」
薬研が声を荒らげたその瞬間、大きな音がして、煙がもくもくと立ち上る。砂煙の中から池田屋の目の前に敵が6体、姿を現した。
「……行くぜよ」
「おう」
陸奥守が走りだし、それについていくように薬研も走りだす。それに、清光と大和守も着いていった。
「……兼さん？」
「……あぁ、行こう」
国広の後ろをついていく。俺が見たのは、短刀、打刀、そして、大太刀のそれぞれ2振りずつの姿。皆、次々と倒していく。俺も短刀1振りを倒した。
残るは、大太刀。皆の力を持ってしても、中々倒れない強者だ。一様に斬りかかっていくが、倒せない。体力も消耗していき、少しの傷も痛む。
＿＿成す術はねぇのか……。
そう思っていた瞬間、オレンジ色の何かが、敵に斬りかかっていった。
陸奥守だった。
身のこなしが上手い。敵の攻撃をするりと交わし、敵の後ろを取った。
「勝てばええんじゃ、勝てば！！」
ザシュ、と音がして、敵は倒れ、消えた。そして、何事もなかったように、いつもの笑顔を振り撒いた。
「これで一先ずはええやろ。宿とってくるき、待っちよってくれ」
くるりと向きを変え、陸奥守は暗い夜道に消えていった。
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作者名：廉火 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Konatu0602/
作成日時：2019年1月8日 2時
