和泉守兼定 ページ2
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人間の姿にも慣れ、この本丸の生活にも慣れてきた頃。俺は主に呼ばれた。
「和泉守兼定。あなたを第一部隊の隊員として戦に出てもらおうと思っています」
「へーへー、俺が副隊長でいいのかな？」
「はい。ただし、あなたはここに来て初めての戦。少し手こずるでしょう。その為にも、力になれる部隊に配置したので頑張ってください。期待してますよ」
「おう、誰と一緒だろうと必ず成功させてみせるぜ」
とは言ったものの、どこに行くかも知らされておらず、誰と一緒なのかも知らされないまま、夕方になろうとしていた。だが、国広と風呂に入ろうとしたとき、それは鳴った。
「兼さん！」
「……あぁ！」
部隊が待つところへ急ぐ。そこには加州清光、大和守安定、薬研藤四郎、堀川国広。そして、陸奥守吉行がいた。
浮かない顔をして地面を見つめる陸奥守。周りの空気とは全く別の空気が、奴の周りには漂っていた。
「……陸奥、陸奥！」
「……っ、あぁ、なんじゃ、主」
「陸奥、あなたが隊長です。しっかり部隊を率いてください」
「……わかっちょる」
やっぱり浮かない。
陸奥守の空気をそこに漂わせたまま、主は話を進めた。
「あなたたちに向かってもらうのは、元治元年」
嫌な予感がした。いや、嫌な予感しかしなかった。
「6月5日」
＿＿あぁ、やっぱり。
主は、戦に出る時代によって刀を選ぶと長谷部が言った。
周りを見ると、みんな顔を真っ青にしている。特に、清光と大和守。
「……沖田、くん」
大和守の小さな呟きは宙に舞って消えた。この部隊で唯一新撰組とは関係のない薬研でさえ、深刻な顔をしているのだから、少し危ない状況だということは、俺でもわかる。
「皆さん、頑張ってください」
主の少し心配そうな笑顔が、今だけは嫌いになった。
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作者名：廉火 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Konatu0602/
作成日時：2019年1月8日 2時
