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54:命の価値 ページ8

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眩しい視界に目を細め、私は新鮮な空気を肺に取り込む。傑の隣に立ち直して辺りを見渡せば、こちらに警戒心を向ける人々。一瞬の寒気に襲われて、咄嗟に傑の方へとより身を寄せた。

そして視界に、五条くんが映ったとき。私の感情が追いつく前に、誰かの声が響く。



「....おい待て、その人は非術師だろうが」



ポニーテールを揺らした女の子が私に向けて指を差す。どうやらここにいるのは全員が術師なようで、その声を聞いたその場全員の視線が一斉に私を囲った。

....唯一、表情の見えない五条くんだけは微塵も反応せずにじっとこちらを見つめたまま、何も言わない。そのせいか、怖気付いて彼を視界には入れられなかった。だけどもう、避けられないことは嫌になるほど分かっていた。覚悟していたんだ。



「猿と同等にしないでくれるかな、愛する彼女は猿でも術師でもない。AはAだ」

「それがお前の言い分と矛盾してるって言ってんだよ。本人の気持ちはどこにある?彼女を勝手に巻き込むのだけは、僕が許さない」

「....はは、君に何が分かる?」



冷たく凍りついたような五条くんの声。あの日、私を必死に傑から遠さげようと彼なりの正義をぶつけてくれたときの面影すらもなかった。
酷く胸が痛んでは、自身の心臓の音が全身から伝ってくるのが分かる。今この瞬間、私が取るべき行動なんて浮かんでこなくて。けれど彼の後ろに身を隠すような真似は、したくなかった。

何も言わなくても分かってる。私達が真逆の立場にいて、この世界で虐げられるのは傑の方だと。世間は彼らを正義と呼ぶと。ここに来るまでの長い期間の中で、それだけは。

だから私も、君のところまで堕ちていきたい。どうかそんな逃げ道のある安全圏を与えないで。



『....五条くん、私の生きる道はちゃんと決めたよ。これが君に示せる証になるかな』



傑の手を取り、強く強く握ってみせる。ただ力任せなものじゃなくて、離す意志のないものを。
私が彼らの言う"被害者"の立場だとしても、選ぶ権利も主張する権利もある。

でもそんな言葉に惑わされ縛られる生き方は、もうやめた。



『傑の為に生きたいと思ったの。私はどこまで堕ちても、傑と一緒なら、もうこれ以上望むものなんてないよ』



あぁこれまで人に恵まれてこなかった私が、こんなにも誰かの為に、誰かと一緒に生きていたいなんて。

理解してほしいなんて思わない。だけど誰も望んでない状況でも、そう思えたこの瞬間が幸せだった。

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むぎ(プロフ) - AO777さん» わ、ありがとうございます…!!!😭そう言っていただけて嬉しいです、何卒今後もよろしくお願いします☺️💕 (10月21日 0時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
AO777 - むぎさんのどの作品も物語がまとまっていて大好きです!陰ながら応援させていただいています。次話の更新が楽しみです! (10月20日 21時) (レス) @page6 id: c3c7964942 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むぎ | 作成日時:2023年10月7日 8時

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