07話 ページ7
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＿＿Aを招き入れる為だけに部屋を準備して、彼女から唯一貰ったキーホルダーを鍵につけて。
未練しかないこの思いは、留まることを知らなかった。
「はは、引かれそうだな。こんなことばかりしていては」
自身を嘲笑しながら、何も言わずして彼女の元を去ったことを今更ながらに後悔している。けれどどんな顔をされるかと、それを考えるだけでも怖気付いた。
何もかも取り返しがつかなくなった後ならば、君のどんな罵倒ですらも飲み込める気がしたんだ。
それでもすぐには会いに行けなかった。後先考えず平屋を買い、別荘という名目で通しておきながら私以外にそこを知る者はいない。本音はどう足掻いても、Aと会う場が欲しかっただけなのだから。
....だからあの日、すんなりと鍵を受け取り部屋を訪れたときには、心臓が止まるかと錯覚する程までに喜びを噛み締めていた。
呪霊を私にくれるなんて約束を、未だに彼女がなかったことにせずに覚えていてくれたなんて嬉しくないわけがない。これを口実に会えると分かっては、思わず鍵を渡したくもなる。
正直言うと、再会した途端に鍵を渡すなんて、最悪捨てられるのではないかと後々不安に駆られていた。元は、何度かふらっと彼女の前に現れそれなりに私への警戒心を解いてからだと順を踏むはずだった。
なのに相変わらず、私はAに弱い。
『ぇ、げとっ....』
＿＿＿あのとき。自分の中で何かが壊れるような音がした。
呪霊を飲み込んだ直後の口にキスを落とし、苦いと言いながら少し頬を綻ばせた彼女への自制心が留まることを知らなかった。
分かっていた。彼女のそのキスに深い意味なんてなく、私が唇を奪い返すことは御法度だったんだ。
なのにもう、止まれなかった。
彼女の腰に腕を回し、強引にその身を抱き寄せる。そのまま塞ぎ込むように深くキスをすれば、反抗心なんて無くした蕩けた瞳が私を捕える。弱々しく名前を呼ぶAは、つい先程までとはまるで別人だった。
それでもなんとか理性を留めた私は、掠れた声で謝罪の言葉を口にする。それが聞こえたかは、分からなかった。
彼女の身を解き、無理に軽く話をまとめてAを送り出そうとすれば、朧げな意識の彼女は私に手を引かれ、普段と真逆な態度で私に別れを告げていた。
これ以上はもう、傷つけてしまう自信があったんだ。
なのにまた来てくれるだろ、なんて。
どうしようもなく遠回りな私の気持ちは、もう君に届かないだろうか。
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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (
レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です！ (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2023年10月20日 18時
