41話 ページ41
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淡くも儚い。けれど芯は何よりも強く、誰もその心に踏み込めない。
そんな風にAへ抱いていた心境を、今目の前で私の名前を呼びながら、涙を頬に伝わせる彼女を見つめながら懐古する。
ずっと、君に触れるのが怖かった。拒絶されることを恐れて、何も伝えられなかった。そうして辿るのがこんな結末だと知っていたなら、昔の私は揺らいでいただろうか。
あまりにも馬鹿馬鹿しい自問に封をするように、自身の腕の中で溶けてしまいそうな彼女にキスを落とした。
消えてしまいそうな細い声で呼ばれる度に、時が止まればいいのにと切に願う。私の為だけに息を吸って、誰の介入も許さないでほしい。
たとえ私達の素直さが、最期に赦された罪だとしても。
「....好きだよ、A」
十年という長い間、この時だけを待っていたのだから。
私達が一切として踏み込まなかった一線。この関係において禁句とされた、日に日に重量を増していく一途な愛言葉。
どれもこれも捨ててしまおう。全てを、この一度きりの夜に捧げる為に。
溢れかえりそうな想いを抑え込んでは、その一言に込めた。彼女は私を叱るだろうか。普段のように冷たくあしらってみせるだろうか。けれどどれも、違った。
『....死んだりなんかしたら許さない。また一人にするなんて、そんなの....っ』
止まることを知らない純粋な涙。私の胸の中にいる彼女は小さな拳を私にぶつけ、何かを悟ったようにそう悲願した。
Aは自らを弱く見せるような態度は取らない。だからこそ、私の言葉にも彼女の姿にも意味が生まれる。
最期に赦される事の数々が、満を持して姿を現していく。それが幸せであると同時に、全ての終わりを告げていることに無慈悲さに打ち拉がれながら。
故に、どんな言葉を利用してでも彼女の支えになりたかった。
「私はどこにもいかないよ。だからどうか、君の想いも聞かせておくれ」
『....ばかじゃないの、そんなの＿＿＿』
＿＿＿愛してるに決まってるじゃない。
十年以上の時を経て初めて明かされた、たった五文字の胸の内。触れ合う度に分かっていた。分かっていたのに。言葉というのはどうも、思う以上に残酷で愛おしいものだ。
痛みが走るのに、心は浮き足立っている。
「....はは、参ったな。君には敵わないね。....帰したくない、二度と離れたくないよ....」
＿＿＿君だけを愛してしまったから。
釣られるように零れ落ちた涙を誤魔化す為のキスは、
いつになく甘く、恋しかった。
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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (
レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です！ (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2023年10月20日 18時
