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40話 ページ40

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どれほど時間が経っただろうか。環境音に苛まれることもなくただ互いの唇を求め合った私達の熱は、いつまで経っても冷めてくれない。
布地の擦れた音に浅い呼吸音。崩れた表情に、額に滲んだ雫が霞む。ふとした瞬間に名前を呼ばれては、積もりゆく涙を刺激した。

もうどうにでもなればいい。最後の日に何もかもが暴かれてしまっても、世界を敵に回しても。それも私が望んだひとつの答えだと思った。
なのにまだ、素直さを取り戻せないのはどうしてだろうか。こんな関係でもいいから、一年に一度でもいいから。素直にならないおかげで貴方に会えるなら、このままでいたいなんて。明日から目を逸らした、馬鹿みたいな思考が揺らいでいる。

心の声を垂れ流したように溢れ始めた涙のせいで、私を組み敷いたままの彼が少しづつ輪郭を失っていく。しゃがれそうな声も、ぐちゃぐちゃになった顔も見られたくないのに。
誤魔化す為に否定的な言葉が欲しくて、また悲観的になっていく。


『ね、夏油。明日になって後悔させたら、ごめんね』

「しないよ、絶対に」


なのに夏油はただ淡々と、隙すらも与えずに私に愛を流し込む。顔を覆う為の腕も退けられては、証明するように優しく私を喰らった。
可視化されていく一線の寸前で、未だ唇だけが触れ合うもどかしいこの時間が大好きなのに涙が止まってくれない。一度気を抜いてしまったからか、私はもう誰にも見せてこなかった姿ばかり晒してしまう。
それなのに彼は、何も言わず私の涙を拭って優しく体を抱き起こしては、柔らかく微笑む。そのまま目が合っては、いつしかすっかり大人びてしまった彼の瞳が揺れた。


「....何年も何年も、君に伝えたい言葉の数々を全て呑み込んできたんだ。でももう、それも終いだね」


甘い香り、耳に残る艶のある声。
学生時代の面影を薄らと残したまま、私の知らない夏油が私に手を伸ばしているような気がした。

でもその奥底に隠されているのは、どうしようもなく愛しい人。


『....傑って、呼びたい』

「......つくづく狡いね。君は」


"もう取り返しはつかないよ"


変わらない肌触りの指先にそっと耳筋をなぞられ、私達の関係の終末へと向かっていく感覚が徐々に襲い来る。


私達の想いの、答え合わせ。
二度と触れられないであろう、ガラスの球体に閉じ込められたような僅かで一瞬と呼べる日々。

想いを隠して、ぶつけて。泣き腫らしたこともあった。

だけどその全てを、心の底から愛していた。

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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です! (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むぎ | 作成日時:2023年10月20日 18時

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