37話 ページ37
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冷めるのは一瞬だとよく耳にすることがある。
いつかそうなるのを夏油がまだ高専にいた頃は恐れていたはずだ。それなのに、どんな側面を持った彼を見てもこの気持ちが冷めることはなかった。
火に油を注がれたように日に日に強まる感情を抑えようもなく、永遠と恋焦がれ続ける自分に少しだけ安堵している自分がいた。それを幸せだと、そう思えたから。
そうやって、夏油が来た日を思い出しながら物思いに耽る。目の前のことに集中しようと気を取り直せば、乙骨くん達から声が掛かった。
五条が生徒達と接する背中を見て、私も自然と丸くなったような気がする。歳の離れた子供達を見るのに慣れてないだけかもしれないが。
「Aさんにちょっと憂太の奴見てやってほしくて」
『勿論いーよ、今行くね』
汚れを払いながら 立ち上がり、真希の後ろをついていく。珍しく空が青く澄んでいて雲一つない晴天だった。突き抜けていく突風に髪を委ねながら、軽く息を吸う。
今誰かの支えになれている自分の姿を夏油に見てほしかった、なんて。そんな図々しい想いを馳せてしまうほど、この景色に酔っていた。
時間の経過というのは、年を重ねるごとに体感が短くなっていく。
今年ばかりはそうでないことを願っていながら、そんなに優しい世界ではないことを重々理解している気でいたというのに。いつしかもう、12月の下旬に差し掛かっていた。
この一ヶ月をどんな気持ちで生きてきたかだとか、何をしていたかだとか。考え出すと全く頭には浮かばずに、焦りだけが残る。
「A、お前はここに残った方がいいかもね」
そんな日だった。五条が、初めから私に戦線離脱を命じたのは。この間の会話から私達を対面させない事が望ましいと思ったようだ。それが吉と出るか凶と出るかなんて、私ですらも分からない。戦場では、秘密にしている関係なんて破綻しているのだから。
そうなると、拒否権なんて端からなかった。
『....そうね、変なお荷物にはなりたくないもの』
百鬼夜行当日、夏油に会えないかもしれない。
途端に頭によぎる可能性は、一度胸に食い込んでは抜き出せない。そこから侵攻し始める不安は掻き立てられ、もう取り除けるわけがなかった。
....壁掛けのカレンダーに目をやり、空白の23日を見つめる。
夏油はこの日、決行の前日にあの部屋に現れるだろうか。真面目な彼のことだ、きっとそんなことは頭の片隅にもないに決まってる。
....そう、思っていた。
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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (
レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です！ (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2023年10月20日 18時
