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27話 ページ27

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彼が布団を敷いてくれて、目の前には柔らかく白い寝床が広がっていた。まだ特有の匂いを帯びていて新品同様らしい。そしてすぐに分かった、これは一人用だと。
それでも今更引き下がれない。引き下がらせてはもらえない。彼は私の腕を引いて、優しくその寝床へと誘うのだから。



「....緊張してるのかい?顔赤いけど」

『う、うるさい。早く電気消して....!』



私達を照らす電灯の下で、夏油は相変わらず私を弄ぶ。私にとっては彼と過ごす一秒、一瞬が苦しくなるほど大切で。でもからかわれた後に夏油の顔を覗けば、愛おしそうな視線を向けてくるから一生懸命張り巡らせていた思考が絶たれて、何も考えられなくなる。
ああ言っておきながら暗闇に呑まれたくないと、そう思ってしまうほど。


いつしか辺りが黒に染まって、彼の手に促され私の身は夏油と共に布団へと沈んだ。順応の遅い瞳は彼を捉えられない。けれど何も言わずに繋がれていた夏油の手が握り返してくれる度に、どうしようもない幸福感に襲われた。
少し動けば、畳へと触れてしまう。そんな状況でも一定の距離を保っていたけれど、私の我儘と彼の優しさに苛まれて、少しずつ落ち着いては居られなくなった。

やがて薄らと夏油の姿を捉えられたとき、私はそっと手を解いた。一時の衝動への後悔と罪悪感に駆られ、私は畳についた手に力を入れて起き上がろうとする。

いつしか、逃げられないことを忘れて。




「....どこに行く気なのかな」

『せ、狭いから....私はやっぱりこたつ借りる』

「はは、冗談はよしてくれ。....そんなの許すわけないだろ」




彼の目が少しも笑っていないことは、暗闇でも分かった。

途端、酷く視界が揺らいで"今さら離すわけがない"と呟く彼に体の自由を奪われる。布団の中へと引き戻され、刺すような痛みを覚える程の寒さが一瞬にして消え失せた。
目の前に広がる厚い彼の胸板と、固く抱き締められた私の体。全身がまた、火照っていく。

こうしたかったなんて言えなかったからなのに、どうして貴方はこんな簡単に行動で示せるのだろう。分からないけれど、私もそれに応えるべきだ。



『....本当は私も触れたかっただけ、なの』



そっと彼の胸に顔を埋め、何もかもを曝け出すようにそう呟く。こんなの普段の私じゃない。そんなの、自分ですらも分かっているけれど。



「....あんまり煽るな、我慢強くないと言っただろ」



荒い口調で激しいキスを落とす貴方も、普段とは違うから。

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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です! (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むぎ | 作成日時:2023年10月20日 18時

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