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22話 ページ22

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Aの印象は、私の知っている女の子達とは部類の違う人間、というものだった。これに関しては硝子も該当するが、彼女とはまた違うような気がしていた。
少なくとも私の知る女の子は、話しかけるだけで甘いマスクを被って一般的に可愛らしいと呼ばれる態度を取るもの。だからAと接しているときは、私の中の常識が通用しなかった。



『夏油のばか、ばーか』

「知ってる?バカって言う方がバカなんだよ」



任務中、とある経緯でAを抱き抱える機会があった。確か彼女が足を挫いたか何かだったと思う。暴れることはなかったものの、永遠と何故か罵倒される始末。あれ、女の子ってこういうの好きじゃないんだっけ、と完全に自分の常識が覆された瞬間だった。

入学当初から、私の中の彼女は完全に未知の生物だった。同じ呪霊操術の使い手として興味は元よりあったが、それとは違う話だ。私の知らない顔をする女の子、彼女は何をしてあげれば喜んで、どんな風に笑うのか。まだ知らない世界が目の前にあるのに、手を伸さずにはいられなかった。実際のところ、周りからすれば私はただの宥め役にしか見えなかったかもしれないがどうでも良かった。Aは素直じゃない面が多いけれど、決して私を嫌っているわけではないと、日々隣を歩くようになって気づいたから。

そんなところが愛おしいと思うようになったのは、いつだっただろうか。
思い出せはしない。気づかない間に、私はふとした瞬間の微笑みだとか、誰にも見せないようにしているその顔を私以外に見られたくはなかった。


....それも、雨が酷く降り注いだあの日からだ。



「A、見なくていい。かなり酷く損傷している、後は私が処置するから」



初めて死体を目することになった任務の日、雨でなにもかもが流されていくような感覚に陥っていた。同じ感情を、彼女に分けたくはなかった。たとえ無情だとか、そういった言葉を投げかけられるようなAでもこの有り様を見れば精神に悪影響だと、そう思っていたから。



『....どいて、大丈夫だから。私だって夏油と同じ任務を任された人間でしょ、なのに私だけ現実から目を逸らすなんて許されることじゃない。そんな気遣い、望んでない』



そう言って私の隣に腰を下ろした彼女の横顔は、あまりに凛々しくて美しかった。自分の偏見が情けなくなり、羞恥心に襲われるほど。

Aの印象が一変したのはこのときだった。それから彼女から目を離せなくなったんだ。

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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です! (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むぎ | 作成日時:2023年10月20日 18時

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