21話 ページ21
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「夏油様、最近仕事を何件か放棄しておられますね？」
「....さぁ？なんのことだか」
一言で言うのなら、図星だった。ただシラを切るのは得意だ。嘘をついて誤魔化すことくらい私にとっては容易なこと。なにより、猿共との会談よりもAとの時間の方が何十倍も大事だった。それを彼女の魅力と共に説明できないのは心苦しいが、私はあの子との居場所を失うような真似はしない。
....だが、仕事面においては日々積み重なってきたものを消費しなければならないようだった。流石にこれ以上連続しての職務放棄は怪しまれる。やがてAのこともあの部屋のこともバレてしまうのは、時間の問題だった。
つまりは仕事をしろと、そういうことだ。最近は金銭面の問題の為に、彼女と再会した頃より動き回る日が多くなったように感じる。今日から行けないなと、目の前にいる菅田さんの声色を伺いながらに理解していった。
毎日通うと言えば、Aは日を気にせず会いに来れるだろうと思っていた。自意識過剰と言われればそうかもしれないが、実際一概にはそう言えない。
最初は三日に一度、少しすれば二日に一度。気づけば、毎日彼女は毎日あの部屋に足を運んだ。そして会う度に、口付けも。
一度もAに想いを伝えたことはない。伝えられるわけがない。それでもキスを繰り返している間だけは、彼女の気持ちが手に取って分かるようだった。きっとそれは向こうも同じだっただろう。たとえどれだけ装っても、キスをしたならその全ては剥がれ落ちる。それをAの"傑"と呼ぶ声が証明していた。
....そのせいか、毎日通うという口約束を破ってしまった日からどうしても彼女のことが気にかかった。私の一方的な気持ちだけがあそこにあるのなら気にする必要はない。それでも、深いキスを思い出しては気持ちを拭えなくなる。
もしも、彼女が私の言葉を信じて待ち続けているとしたら。
....そうは考えたくなかった。私に腹を立てて鍵を捨ててくれた方が、まだ良かったのに。
「....馬鹿は君じゃないか」
ようやく隙をついてあの部屋を訪れる暇ができたあの日、道端に落ちていたあのキーホルダーを見つけたときから、ずっと嫌な胸騒ぎがあった。
部屋の真ん中で身を縮ませて眠る彼女が、そこにはいた。そっと顔にかかった髪をかきあげてあげれば、畳に残った涙の跡と未だ頬に残る雫が目に映る。
....ごめん、好きだよ。大好きなんだ。
でも今の私に、君に合わせられる顔はない。
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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (
レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です！ (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2023年10月20日 18時
