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03話 ページ3

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「遅かったね。一人で大丈夫だった?」

『大丈夫だよ、幼児じゃあるまいし』


それもそっかと2人だけの教室で硝子が笑う。夏油がいなくなったこともあって、五条は今まで以上に任務に駆り出されることが多くなった。それを埋める程の能力は、私にはない。だから使えそうな呪霊を手に入れたときには、夏油に使ってもらう方がよっぽどいいと思っていた。

ある程度戦力になるやつがいればいい。一級術師ながらに、私はずっとそう思い込んできた。同じように、呪霊を渡そうとする私を気にかける夏油にも言い聞かせて。

呪霊操術が使える人間を、私は自身と夏油以外には知らない。だからか私達はよく並んで任務に出ていたし、話せば理解し合える同期だった。
彼は呪霊玉としてそれらを取り込んでいたけど、私は家系の関係もあり小さな瓶状の物に取り込む術を身につけていた。けれど自身のものとする場合、同じように飲み込む必要がある。

だから彼の苦しみは私も同じように経験していた。でも私にはまだ逃げ道がある。ある程度の戦力になればと考える私にとって、飲み込むメリットはあまりなかった。特製の入れ物で取り込めればそれでいい、でも夏油はそうじゃない。



『....呪霊瓶、何個か申請出してないんだよね』

「あーあ、夏油がいたら叱られるやつだ」



無駄に広く感じる教室、硝子の笑い声が日に日に救いになっている。何も変わらないというように過ごす彼女が、少し眩しかった。

夏油のことを分かっているつもりになりながら、この逃げ道があるかどうかで身体への負担がかなり変わることを、私は彼の離反後に気づいた。時すでに遅しとはまさにこのことで、夏油に恨まれているのではと思うほどまでに絶望した。

だから会ってくれないんだと、自分を納得させる理由は十分にあったはずだ。でもずっと握り締めている鍵を見つめる度に、夏油はそんな風に恨む人間じゃないなんて勝手な考えが浮かぶ。



『今週の土曜、出かけてくるね』

「また?珍しい、五条か誰か連れてくの?」

『ううん、一人。少し遠出しようと思って』



送られてきた住所を頭に浮かべながら、その内硝子に別れを告げて教室を出ていく。
県外の田舎の方にある小さな建物。携帯で調べた情報から分かるのはその程度だった。


今日会った私服姿の夏油を思い出す。
髪を下ろし、ただの一般人に紛れたように笑っていた彼から、これまでの思い出を想起させることの出来なかった、今日のことを。

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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です! (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むぎ | 作成日時:2023年10月20日 18時

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