20話 ページ20
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ずっと思い出せなかった唇の感触、彼の胸の暖かみ。その全てが彼の存在を証明していて、でも未だ触れているものが現実だと受け入れられない。
それでも、逃げられないような強引さが私を離さなかった。キスを繰り返す度に足が震えて力が抜け落ちていく。それでもお構いなしに玄関の戸に体を押し付けられ、腰を抜かすことを許してくれない。
『＿＿ま、まって。一回、止めて....』
「....君が思ってるほど、私は我慢強い人間じゃないんだ」
『ひ、ぁ....』
そうやってまた、堕ちていく。
私を逃すまいとする腕があまりに強くて、息を求めても離れられない。戸に押し付けられたままの手に彼の指が絡んで、そのまま力を込められていった。意識が一つに定まらなくて、全身が敏感になっていくのを感じる。
彼が鮮明に輪郭を帯びて、私の中の現実と重なっていった。
あぁ夢じゃないんだって、期待がこの手に収まったことを理解したとき、気が抜けたように足から崩れ落ちていく。
けれど床との衝撃で体が傷むこともなく、未だ私は夏油の腕の中にいた。宙に浮いたかのような感覚と、目の前の情報処理が追いつかない。目に映る、愛おしそうに頬を緩めた彼のことで頭の中を埋め尽くされて、"会いたかった"以外の言葉なんて浮かんでこなかった。
目の前に夏油がいて、触れて、口付けを交わして。聖夜の夜だとか、それに感化された幻想だったとしても良いと思えた。
ただ、ただ。ずっと大好きな貴方に会えるだけで、それだけで良かったから。
『す、ぐる....すぐる....っ』
「....A」
名前を呼べば踵が浮くほどまでに強く抱きしめられて、夏油の柔らかな声が私の耳を撫でる。彼の髪が頬を掠め、もう一度、浅くて熱いキスが落ちてきた。
冬だというのにやけに全身は火照って、溶けているようだった。熱くて、甘くて、心は確かに暖かい。
もう少し、ほんの少しだけでいい、私から彼を奪わないで。
そんな願いが許されるのなら、どんなに幸せなことだろうか。今の私はただ手探りに、彼が消えてしまわないよう触れることしかできないから。
靴も脱がぬまま玄関先で我を忘れたように互いを求め合っていた私たちは、息ができなくなったふとした瞬間にキスを解いて視線を交わし合う。
熱く濡れた瞳は、私だけを見ていた。
「....もう、会いに来てくれないかと思ってたんだ」
『そんなの、私のセリフだし....』
素直さは、相変わらずひた隠しにして。
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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (
レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です！ (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2023年10月20日 18時
