17話 ページ17
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「先輩のセンス、絶望的ですね」
「僕は個性的でいいと思いますよ!」
『....結構好き放題言うよね君らって』
爽快なBGMが店内を満たし、店員自作の小さな看板達に目をやりながら私は手元のキーホルダーを見つめ直す。
夏油への初めての土産を買ったあの日。前にお菓子を貰ったお礼という名目で、私は彼へのプレゼントを見極めていた。....なのに同伴していた後輩達が後ろからお節介なことを言うものだから一向に決まる様子がない。
七海にはことごとくダメ出しを受け、なんのフォローにもなってない灰原が助言してくれる。無難に食類にしとけと言われるものの、私はどうしても形に残しておきたかった。自分にセンスがないことくらい分かっているから、少しくらい先輩に優しくしてくれてもいいのではと思う。
『やっぱり、これが一番良さそう』
「この地で有名な花のモチーフ....わざわざご当地物にしなくてもいいのでは、思考が小学生ですよ」
『....ムカついたから絶対これにする』
別に土産なんて貰った側からすればいずれ忘れ去る物。たとえ私が土産という肩書きを利用して、少しでも夏油への思いを込められたらと選んだ物だとしても、その真意は私と細かく言うなら七海しか知らない。
「え、私にお土産?君から?」
『なに、いらないの?いらないなら五条にでもあげるけど』
「あぁ待って、違うんだよ。その....なんだか少し、新鮮で」
"私の為に選んでくれたの?"
そんな言葉が、声色が、表情が。私の頬を緩ませ、本音が零れてしまいそうになるほど胸に染み渡る。
どうしてこうも、"気に入ったから買った"程度のことしか言っていないのに夏油からの言葉は的を得るんだろう。顔に出ている?態度に出ている?分からないけど、一生懸命首を振った。彼の為だけに選んだことは、図星だったから。
「それは残念。にしてもこんな花柄、あまり見たことないな」
『....任務先で有名な花だって、七海が言ってた』
「へぇそうなんだ.....ふふ、なら凄く貴重だね。この花も、Aがくれたってことも」
『は、はぁ?なんでそこで、私が出てくるの....』
じわじわと熱くなっていく頬。泳ぐ視線と、加速していく脈拍。好きって思わず、言いたくなる。
そんな私を他所に、目の前で嬉しそうにキーホルダーを提げた彼は薄らと目を細めていた。
「ありがとうA。大切にするよ、ずっと」
戻れない青い春。でもこの笑顔だけは、忘れられない。
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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です! (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2023年10月20日 18時