16話 ページ16
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古びた鍵穴、光のない戸の向こう。
どこかで期待をしながら鍵を開け、私を迎える静寂にため息が漏れる。同時に、キーホルダーの消えた鍵に対しても。寮を出るまではあったのだから、どこかに落としてしまったのだ。もう何もかも、嫌になる。
『....馬鹿みたい。ただの口約束に執着して、自分勝手に寂しがって』
戒めるように呟いてみても、無慈悲な静寂が私を突き刺す。
主観で考えて、勝手に納得して。夏油自身の本音なんて一度も聞いたことはないのに、一人で完結して。けれど何も言わずにいなくなるなんて、あの夏の日と変わらない、そんなの優しさじゃない。少なくとも、私にとっては。
....でもきっと、何も知らないくせにこんなことを言うのは夏油に失礼なんだと思う。彼なりに考えがあって距離を置いたんだ。仕事が忙しくなったのかもしれない。私なんて優先順位は低くていい。大丈夫、ちゃんと言い聞かせられてる。夏油には新しく守るべきものができたんだから。
....あぁでもダメだ、寂しさに嘘をつけない。
鼻をつく畳の匂い。微かに霞む彼の香り。
畳に手を滑らせ横になり、胸の中に溜まったモヤを誤魔化すように身を縮こまらせた。少し肌寒い、この部屋には暖房器具とかないのかな。そんなことをきっかけに、脳内で心の声が次々と張り巡らされていく。
私が来るより前、いつも夏油はここで何を考えて、何をしていたんだろう。本当に邪魔じゃなかったのかな。キスの意味を聞けなくても、想いの形として受け止めてもいいのかな。昔も今も、貴方は私のことをどう思っているの？こんな性格の悪い私に、どうして優しくしようとするの。
....もう、私の気持ちに気づいてしまったかな。
あのね、夏油。私本当は、貴方のことが＿＿＿＿
徐々に瞼が重たくなっていく。体の自由が効かず、指先さえも意識が行き届かなくなる。濡れた視界を拭うこともできず、自分の想いすら最後まで....
＿＿＿＿外から聞こえる夕方のチャイムの音を頼りに視界が広がる。意識があの部屋にいることを理解したとき、反射的に起き上がり携帯で時刻を確認した。
『....もう、17時....やっぱり、一日居たところで意味ないよね』
来る時間がズレているだけ、なんて淡い期待をどこかに抱いていたことを忘れるように携帯を閉じた。
項垂れるようにもう一度畳に寝転がろうとする。けれど視線の先に、"あるはずのない物"が映って、思わず顔を上げた。
....声にならない音が、零れ落ちていく。
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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (
レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です！ (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2023年10月20日 18時
