14話 ページ14
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取り返しがつくように自分達で決めた境界線の上で踏み留まっていても、傍からすればそんなものは元より破綻していると思われるかもしれない。
でも、全部分かった上であの場所にいるのなら。口出しできるものなんて、何処にも存在しない。
『....ごめんね、好きだよ。大好きなの....』
寮の自室に帰った私は、布団に包まれ静かに呟く。何が呪いになるかも分からないこの世に怯えて、名前を口にすることも出来ずに。
身も心も常に夏油のことを想っている。行き場のない恋心は、燃え尽きることなく胸の内に留まっている。
こんな私でごめん、あの夏に素直になれなくてごめんね。
貴方となら堕ちても構わなかったなんて、きっと死んでも言えない。彼自身の本音に向き合った上での決断を、私なんかが汚してはいけないから。
再会してから素直になるのは遅すぎると分かっていた。それでも、素直な態度で会えたらと願っている自分がいた。でもそれを禁じられた今、残っているのは後悔という選択肢だけ。
変わり続ける電話番号、変わらない間柄。
体に満ちない呪力の残穢、髪に満ちた残り香。
逢瀬に溺れる密室、静寂を帯びた熱。
＿＿＿＿後悔も煩悩も、いつしか呑み込まれていく。
＊
「じゃあ、また」
『はいはい。気が向いたらね』
当たり前のように部屋を訪れ、呪霊を渡し、お互いの近況報告なんて形だけのものを繰り返す日々の中。
同時に部屋を出ることだけはしなかった私達は、絶妙に時間をずらしてここを去る。一歩外出た瞬間から、処刑対象と敵対する術師へと戻らなければいけないから。
以前から私は、帰り着くまで夏油のことを考えるのは辞めていた。何かあった際に私情が挟まるのを恐れたから。部屋を出る数秒前から脳内を世間に乗っ取らせ、私達の関係を元に戻す。今日もそれを繰り返す、はずだった。
....ふと、玄関の戸を引こうとした手を止め、靴を脱ぎ捨て夏油の袈裟を引いた。次の瞬間には私の力の比にもならない強さで抱き寄せられて、彼の髪が頬を掠める。
「....寂しんぼめ」
『今の言葉、そっくりそのまま返すから』
他人事のように俯瞰した言葉を交わしてほんの僅かな沈黙の末に、浅いまま深くなるキスが落ちてきた。漏れ出る吐息に目もくれず、呼吸を忘れるように。
きっと無意識な、本能的に何かを感じ取っての行動だったのだと思う。
....その翌日から、夏油はあの部屋に来なくなった。
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むぎ(プロフ) - カナさん» 素敵なお言葉、大変嬉しいです!!!!☺️私も二人の幸せを願ってやみません、どうか一緒に最後まで見守っていただけると幸いです。 (1月29日 23時) (
レス) id: 1e000180a9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 切なすぎて最後がくるのが待ち遠しい反面悲話にならないで欲しいとただひたすらに願っています。それくらいこのお話が大好きです。 (1月28日 21時) (レス) @page41 id: cd1392beae (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - りんごさん» 嬉しいです!!!ありがとうございます🙌💗 (11月9日 1時) (レス) id: 3893744af8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 引き込まれました、凄く好きなお話です！ (11月7日 0時) (レス) @page26 id: 96e8a3b79d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2023年10月20日 18時
