21:なんにもないね。 ページ21
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『に、にげるって、なにから』
「ばーかお前、そんなん一つしかねぇだろ」
しんぞうがドキドキ言って苦しい。
悟くんが、社会的にあぶないことを言ってるってわかってるのに、ちょっぴりそれに期待しちゃってるわたしもいて。
お母さんか悟くんかをえらべって、言われてるみたいだった。
「....分かった。無理にとは言わんが、とりあえず俺の質問に答えろ。今まで母親に、嫌だなって思うようなこと言われたことあるか?」
『ぇ、あ...."お前はいらない子"って言われたの、いやだった』
悟くんにきかれて、急に思い出したことをぽつりとつぶやく。
そしたら「他にはあるか」って優しい声でまたきくから、がんばってしまってたのがガマンできなくなって、勝手に出ていった。
『"お前がいなかったら"とか、う、"産まなきゃ良かった"とか、あ、あと....』
「ごめん、もういい。....悪かった」
話してるとちゅーで悟くんが急にあやまったりするから、なんでって思った。でも、自分のほっぺをさわって泣いちゃってたことに気づいたの。
なんで泣いてるのか、わからなかった。だってお母さんにどれだけ言われても、痛いのはいっしゅんだけで、お布団で寝ちゃえばぜんぶ忘れられたから。
なのに、自分で言ったら泣いちゃうなんて、おかしいよね。
それなのに悟くんは、それいじょーは何も言わなくて。
でんわ切れちゃったのかなって思ってたら、また声がした。
「....でもこれで分かった、母親を許す余地もねぇって。だからお前は逃げていいんだよ。俺が迎えに行く、涙拭いて待ってろな」
『....ぇ、だ、だめ....!悟くんがつかまっちゃう!』
「お前がいなくなっても、母親は警察に連絡なんてできねぇよ。それに匿うのは、あんまり言いたくねぇけどあくまでも五条家の人間だし。捕まったりしねぇから、大丈夫」
悟くんの"大丈夫"は、きけんな匂いがするのなんだかとってもやさしい声で、わたしは"そっか"って言うことしかできなかった。
荷物まとめとけって言われて、わたしはランドセルにシートンどうぶつきとか、悟くんが買ってくれたおようふくとか、がんばって入れこんだ。
....そういえば、おもちゃとか買ってもらったこと、ない。
中に入れたのは、ほとんど悟くんからもらったもの。お母さんとの思い出があるのはこのランドセルだけ。
なのにもう、さみしいって思わなかった。
....だれか、わたしをわるいこって叱って。
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暁月臨(プロフ) - 最高すぎます、、、、!!更新頑張って下さい!応援してます!!! (8月18日 3時) (レス) @page21 id: 59dc159e7e (このIDを非表示/違反報告)
くま - めちゃくちゃ好き過ぎます。更新待ってます (7月30日 20時) (レス) @page19 id: 7f92ff71c6 (このIDを非表示/違反報告)
匿名さん - ひらがなオンリーじゃなくて、漢字も使ってるのに、小さい子供っていうことが伝わってくるの、読みやすいのに、感情も伝わってきて、本当にすごいですね!何度も読み返しちゃうくらい好きです!これからも頑張ってください!応援してます! (7月30日 1時) (レス) @page19 id: bca78c906d (このIDを非表示/違反報告)
来世 - 大好きです! (7月18日 15時) (レス) id: 23ef5c5b40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - は………?何これ好きすぎるんだが!?どうしてくれるんですか!神すぎるうう!(うるさい) (7月5日 0時) (レス) @page18 id: a3aa2404cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2023年3月28日 17時