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『ぅ、ぐ』
「A！」
座り込んだ彼女が、体を震わせながら必死に右腕のあったところを押さえる。けれどそれは止まらない。
『これじゃあ、おめでとう、って...伝えられてないじゃん...ちゃんと、ありがとうって聞いて死にたかったのにっ...』
「伝わってる、ちゃんと届いたんだよA、だからもう泣かないでくれ...」
『...会いたいよ、傑』
「ここにいるよ、私はずっと、この一年間君の傍にいたんだ」
そう言いながら視界は霞んでいく。目の前にいるのは一年前の彼女なのだからこの言葉が届くことはない。今更何を言ったって。
彼女が発見された当時の遺体は、下半身が半分失われていた。つまりまだそのときではない。小さな期待が止めを知らない。
『今はなんとか隠れてるけど、絶対時間の問題だよね...っ、せめて、言霊でも残しておこうか』
そんな独り言が私を反応させた。もうほとんど開いていない瞳がこちらを見る。
『どうか、傑が心から笑える日が、来ますように。...本当は、四人で、笑い合う未来を夢見て、いたんだけど。そこに私はもういない、から。三人で絶対、幸せになってね。
...約束、だよ、傑。メソメソしてたら、呪っちゃうからな...！』
ふふ、と瞼を下ろした彼女が笑う。そこに生気なんか残っていなくて、今にでも死んでしまいそうで。触れられない、抱きしめられないもどかしさが苦しい。
こんなに下の名を呼んでくれるのなら、もっと早く想いを伝えるべきだったのに。
呪いの正体は、この言葉だったのだろう。かなりのショックを受けた私に、思いの強かったこの呪いがかかった。
彼女の口癖は、単純に私を心配してくれて、大切に思ってくれたからこそだったんだ。それに気づけないまま、はぐらかしてばかりで、時には面倒だなんて少し思ってしまって。
『...傑、』
「なんだい、A」
『好きだよ、大好きだったんだよ、』
「私もだよ、心から愛してたんだ」
『ちゃんと今日戻ったらね、"いいこと"として教えようって、思ってたんだ』
「そう、だったんだ」
『次会うときには、絶対言うからね。いつか...』
「大丈夫、ちゃんと...ちゃんと、届いたよ」
そう呟くと、静かに彼女は息を吐いて手を伸ばし、瞼をあげて笑った。
『心から、笑ってよ、傑』
「あぁ...だって君との約束だから、ね」
その笑みに微笑み返すように、私も笑った。自然と浮かび上がった笑みだった。
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seksi - 泣きすぎちゃった！！ (8月8日 16時) (
レス) @page12 id: 938f11a994 (このIDを非表示/違反報告)
あめ玉 - 泣ける！ガチですごい！ (2022年3月27日 3時) (レス) @page12 id: 09aca0ac89 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫さん - 涙が止まりませんとても心が温まりました！ありがとうございます！ (2022年2月27日 1時) (レス) @page12 id: cbcafde3fb (このIDを非表示/違反報告)
ぱすた(プロフ) - 泣いたヽ(；▽；)ノ涙が止まらん (2022年2月5日 19時) (レス) @page12 id: 287f0ed476 (このIDを非表示/違反報告)
もうた(プロフ) - 泣きながら読みました笑死ネタはあまり読まないんですけどこのお話は個人的にめっちゃ好きです (2022年2月5日 8時) (レス) @page12 id: 3c458b34df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2022年2月4日 22時
