□.11話 ページ11
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『あの、ね...』
そう発した彼女は、俺を見つめた後すぐ視線を下に降ろし瞼を閉じた。
ポロポロと落ちていく雫が制服に染みていく。
それから10秒ほど経っただろうか、Aは顔を上げ、息を吐き、涙を拭って俺を見た。
さっきとは少し違う瞳に釘付けになる俺を置いて口を開く。
『あのね、佐野くん。私ずっと...君のことが好きだったの。知らなかったでしょ。
君が私の家にたい焼きを買いに来てくれた日からずっと＿＿＿＿＿＿』
そう言って、彼女が少し笑みを零したとき
俺は思わず抱きしめそうになった。
目の前に広がる現実が信じられねぇで、夢じゃないのかと思って。
でも軽く手の甲を摘んでみたら痛くて。俺も泣きそうになった。
そんなの知るわけねぇじゃんか、知ってたらこんなことしてねぇよばか。
目の前で必死に涙を堪えながら話し続けるAを前に、そんなことを心の中で呟いていた。
彼女の話の内容は、俺が気づきもしなかったことばかりで
俺が相談を持ちかけていたときには既に失恋したと思い込んでいたこと、
それでも断れねぇで俺の相談に乗り続けたこと、
目の前で好きなヤツだと称してAの話をしていたときに苦しんでいたこと。
気づいてほしいと思うばかりだった俺だって、Aの思いに気づこうとはしていなかった。
ずっと両片想いだったとか、恋のキューピットに相談するよりも前に恋は叶っていたとか、誰が分かんだよ。
そんな俺の心の内なんて知らない彼女は、掠れた声で謝罪の言葉を口にする。
『＿こんなこと言ったら絶対に君に嫌な思いさせちゃうから、嫌われちゃうからずっと言えなかったの。
本当はこれからもずっと、言わないつもりだったんだ。
きちんとお願いされた役目を終えて、佐野くんのことは諦めるんだって決めてた。
だけど、抑えきれなくなっちゃった...本当にごめん、ごめんなさい...』
再び頬に涙が伝って、下を向く彼女は
もう俺を見てはいなかった。
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むーこ - 二人のふとしたところのすれ違いが物語をより甘くしていて、どちら目線でもきゅんきゅんしました！素敵な作品をありがとうございます！！ (8月15日 15時) (
レス) @page15 id: af2a3b499e (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - シェリーさん» こちらこそありがとうございました....！！お楽しみいただけたようで良かったです！！ (2021年12月11日 9時) (レス) id: 817b6fa623 (このIDを非表示/違反報告)
シェリー(プロフ) - あああ…ありがとうございました！最後までとっても楽しかったです！！！ (2021年12月11日 5時) (レス) id: d81e626837 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - ちびさん» 継続して読んでいただきありがとうございます！！マイキー君目線がキュンキュンを高められているようで本当に良かったです…！こちらこそ愛読して下さりありがとうございます！頑張ります！！ (2021年11月26日 21時) (レス) id: 817b6fa623 (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - はじめまして。本編から継続して読んでいますが…本編だけでも悶えまくりなのに、マイキーくん目線の番外編まで…このような素晴らしく萌えキュン要素いっぱいの素敵な作品を作ってくださりらありがとうございます！作者様のペースで更新頑張ってください！ (2021年11月26日 1時) (レス) id: 190d57c004 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2021年11月5日 17時
