08:密着度100% ページ8
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『タオル取ってくるから、そこで待っててね』
その言葉を合図にするように、Aは部屋の中へ、夏油は一人玄関に取り残された。
髪ゴムを外し、改めて彼は自分の体を確認する。服へと触れると少し冷たながらにも前よりはだいぶ乾いていた。
少し経つと、足音と共にAが戻り、見るからに手触りの良さそうなタオルを抱えたまま、夏油の前に立った。
タオルを手渡そうとしたとき、彼女は迷う。
『これって私が拭いてあげてもいいのかな...でも嫌がられるかも..』
二つの選択肢が現れ、ピタリとその手を止めた。
そんなAの心中を知らない夏油は、彼女の名を口にしようとした、が。
「っ、わ」
『ほらやっぱり...こんなんじゃすぐ風邪引いちゃうよ』
それよりも彼女の決断の方が早かった。
ぐっと一生懸命背伸びをしてぶっきらぼうに、けれど優しく彼の頭をタオルで撫でた。
夏油のことだから「自分で拭くよ」と言いかねなかったが、愛あっての行動だと受け取った彼は少しかがむだけで何も口出しはしない。
Aの足の力みが弱まり、床の軋む音が響く。
『今日の傑、やけに静か』
彼女自身もこの手を止められるものだと思っていたため、そんなことを心中でぽつりと呟いた。
解けてしまった長い髪が何度かAに触れる。普段と違う、どこか大人っぽい髪をした彼に少しきゅんとしてしまい、一度拭く手が止まった。
そんなことはお構いなしに
「...A?どうかしたのかい?」
なんて、彼女の目を見て聞くものだから
『っ、うるさいばか...!!』
と理不尽に叱られ、今度こそぶっきらぼうに撫でられる。
すると、焦っていたせいか伸ばさなくてもいいはずの足をぐっと上げ
『わっ...!』
その結果、滑った。
ズルり、という音と共にAの体が夏油の方へと倒れ込む。反射神経のいい彼は勿論彼女をぎゅっと抱きとめた。
少し濡れたタオルが、静かに床へと落ちる。
『す、すぐる』
「ごめん、もう少しだけ」
そう言ってAの肩に顔を埋め、今以上に強く抱きしめた。壊れてしまわないように、彼なりの加減を効かせて。
激しい夏油の心臓の鼓動が彼女に伝わっていく。それは彼も同じで、彼女の体温を感じていた。
やがてAが感じていた肩の重みが無くなり、ふと互いの目が合う。
彼女がこの流れに逆らうことなんてできる訳もなく
静かに、二人の唇が重なった。
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甘木 - えっ何でこんなに可愛いんですか…??夏油様も可愛ければ夢主ちゃんも可愛い…え?夏油様は神じゃなく天使と女神が合わさった方だった…?(脳し) (2022年1月28日 2時) (レス) @page7 id: 7c01fc8068 (このIDを非表示/違反報告)
青葉 - えっ?二人とも可愛いすぎんか⁇夏油様頑張れ!笑 (2022年1月27日 13時) (レス) @page5 id: 72f2f340c8 (このIDを非表示/違反報告)
RURI(プロフ) - 夏油様!むぎちゃんの新作待ってましたー!可愛い攻防戦をありがとう(*´˘`*)♡ (2022年1月26日 23時) (レス) id: 8724428549 (このIDを非表示/違反報告)
ろく - めちゃ可愛い夏油傑です最高です (2022年1月26日 22時) (レス) @page2 id: 5f4bcdb5df (このIDを非表示/違反報告)
甘木 - わあ…!夏油様だ…!なにこの可愛くてちっちゃな攻防戦‼︎可愛い過ぎませんか??え、可愛さに殺されるっ…! (2022年1月26日 21時) (レス) @page2 id: 7c01fc8068 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2022年1月26日 18時