13:不意打ちなんてそんなもの ページ14
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誕生日を終えた翌日、体調が回復した夏油が朝早くに教室へと顔を出した。
「おはよう」と、正体の分からない人影に声をかけ、その声に釣られて柔らかな声音が響く。
『良かった、元気になって』
「あぁ、昨日の愛の籠った口付けのおかげかな」
冗談でもからかっているわけでもなく、軽々しく夏油は罪深いことを口にした。そのせいかAの手は止まる。けれどペンを持ち直し、とぼけたように疑問で返す。
普段、照れを我慢するときのような冷たさを纏って。
『なんのこと?』
「相変わらずとぼけるのが好きだね、君は。ところで、ペン逆さになってるよ」
冷静を保ったフリをしていたというのに、体はあくまでも正直で確かに彼女の手に収まったペン先は、何故かノートではなくAの方を向いていた。
指摘されたことと隠していたかった感情が羞恥心にまで成長し、僅かに耳先が照っている。
これ以上優勢に立たせるものかとペンを置き、彼女なりの拗ねを表面に出しながら自分よりも背の高い彼の前に立ちはだかってみせた。
自分が今、Aをいじる立場にいて優勢であることを誰よりも理解していた夏油は、目の前で小さく頬を膨らませている彼女に愛着が湧く。
強がっちゃって可愛いな、この子は___
そんな、少し上から目線で、こんなことばかり考えていた夏油。けれど次の瞬間、柔らかな感触が唇に、腕に伝わる。
「....!?A、何して....」
『隙あり。私が引け目だからって油断したね?傑クン?』
彼女は一瞬の隙をついて必死に背伸びをし、淡い口付けを交わしてみせた。
よろめくことがないように彼の腕に掴まったからか、夏油の制服の袖が少し伸びている。
そして、慣れないことをした恥ずかしさを押し殺しながら、必死にドヤ顔をする彼女の姿が彼の目には映っていた。
優勢とか劣勢だとか、そんなものは夏油の中から消え失せて、ただの愛おしさが彼の心を占領する。
今すぐにでも引き寄せてキスをしてしまいたい。
欲望が全面に押し出されるが、あくまでもここは学校であり更には自分達の教室。
理性を保てる保てないの話じゃない。
保つことは義務だ。
そんな思考は一瞬の内に夏油の頭を駆け巡って、深く深くただため息をついた。
「良かったねA、ここが教室で」
部屋だったら自制できなかった、なんて言葉を飲み込んで。
きっと攻防戦なんてそっちのけで、彼の一人勝ちだっただろうから。
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甘木 - えっ何でこんなに可愛いんですか…??夏油様も可愛ければ夢主ちゃんも可愛い…え?夏油様は神じゃなく天使と女神が合わさった方だった…?(脳し) (2022年1月28日 2時) (レス) @page7 id: 7c01fc8068 (このIDを非表示/違反報告)
青葉 - えっ?二人とも可愛いすぎんか⁇夏油様頑張れ!笑 (2022年1月27日 13時) (レス) @page5 id: 72f2f340c8 (このIDを非表示/違反報告)
RURI(プロフ) - 夏油様!むぎちゃんの新作待ってましたー!可愛い攻防戦をありがとう(*´˘`*)♡ (2022年1月26日 23時) (レス) id: 8724428549 (このIDを非表示/違反報告)
ろく - めちゃ可愛い夏油傑です最高です (2022年1月26日 22時) (レス) @page2 id: 5f4bcdb5df (このIDを非表示/違反報告)
甘木 - わあ…!夏油様だ…!なにこの可愛くてちっちゃな攻防戦‼︎可愛い過ぎませんか??え、可愛さに殺されるっ…! (2022年1月26日 21時) (レス) @page2 id: 7c01fc8068 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2022年1月26日 18時