32:聖なる夜に ページ34
*クリスマス記念
「今日がたまたま休みでよかった。今年はクリスマスをAと過ごせるとはな」
ソファの上、クッションを抱きしめながら隆くんが私を見た。
12月24日クリスマスイブ。土曜ということもあり、お互いお休みだった。
テーブルの上にはご馳走を並べ、予約しておいたケーキを食べて。
こんな幸せな日が来るなんて、と思うくらい心は完全に浮かれていた。
『私も嬉しいな、去年は仕事入っちゃって一緒に過ごせなかったもんね』
「あの日はマジで辛かった。一年に一度の特別な日だって言うのにな」
去年の話題に花を咲かせ、「懐かしい」と笑いあう。
だって今日は彼が隣にいる。去年とは違うぬくもりがある。
ずっとこの日が続いて欲しいと思ってしまうほど幸福感に浸っていた。
「今年はイブも当日も、ずっとAのそばにいるから」
『じゃあ私へのクリスマスプレゼントは隆くんだね』
「それは俺も。こうやって隣にいれることも当たり前じゃねぇもんな」
大人になってからは子供の頃のようにはいかないもので、失敗の繰り返しで、お互いの仕事もあり全然会えない日もあって。
同棲を始めてからじゃすっかりその有り難みを忘れてしまっていたけど、いつも隣に隆くんがいるのは当たり前じゃない。私が噛み締めるべき幸せなんだ。
そう自覚してからは行動に移すまでが早かった。
『...隆くん、クッションばっかりじゃなくて...その、私も...』
小さく手を広げ、チラリと彼を見る。
何かを察したように、優しく笑った。
「クッションにヤキモチ妬いてんのかわい。ほら、こいよA」
クッションを離して私の方へ手を広げる。
ゆっくりと近づくと、私が抱きしめるよりも先に隆くんの腕は私を包んだ。
感じる体温と鼓動の音。未だに全く慣れない。
「あー...クッションより断然こっちがいいな」
『隆くん、なんか照れてる?』
「...何言ってんだよ、そんなわけ」
耳を赤く染め、そっぽを向く彼の頬に唇を触れた。
背伸びをするかのような体制を取ったせいで、彼との顔の距離が近くなる。
「...俺にプレゼントは早いんじゃねぇの?」
『だってもう12時過ぎたから...』
気づけばイブは終わり、クリスマス当日をソファの上で迎えた。
プレゼントだよ、と笑うと耳を赤くしたまま彼は
「メリークリスマス、A」
今日も意地悪く笑って、そっとキスを落とした。
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椿(プロフ) - 三ツ谷クンかっこよす…! 以前のコメの返しに書いてあったんですけど裏事情編はもう世には出さないんでしょうか…? (2022年6月25日 2時) (レス) id: 2ebe3047aa (このIDを非表示/違反報告)
東リベ推し - 尊死してます⭐️最高です❗️お話作りの天才だ,,, (2022年3月28日 14時) (レス) @page30 id: e85af83036 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - あっそうだったんですね!全然気にしないで下さい!!本編でお腹いっぱいなくらいですから! (2022年2月6日 19時) (レス) id: 8246f3ea16 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - みおさん» あわわごめんなさい...!!諸事情で裏事情編を消してしまって...すっかりこちらのお知らせを削除しておくのを忘れてしまっていました、大変申し訳ないです... (2022年2月6日 15時) (レス) id: 817b6fa623 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - 1日で全部読んでしまいました、最高です、むぎさん神ですか?もう、本当に!何ですが何故か裏事情編が見れなくて、ログインもしてその不健全なのも見れるようにしてあるんですが、 (2022年2月5日 15時) (レス) id: 8246f3ea16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2021年10月14日 21時