16：鼓動が手に取って分かるように ページ16
.
「...ん、病み上がりでそんだけ力出せてんなら十分」
『ｯﾊｧ...ありがとう、ございます...』
息を荒くする私の隣で、いつも通りな顔して先輩はサングラスを弄った。
分かっていたけれど到底先輩には適わない。強さが異次元過ぎるのだ。
胸に手を当てなくとも、心臓は自分を主張するかのように激しく鼓動している。
「ごめん、配慮できてなかったんだけど足、大丈夫？」
『は、はい。あんなのかすり傷みたいなものですから』
大丈夫ですよ、と笑ってみせた。それでも先輩は眉を下げて心配そうに顔を歪める。話題をなんとかすり替えなくては。
そう思い、自然な感じを意識しながら『そういえば』と口を開いた。
『先輩、表情とかなんだか柔らかくなりましたよね』
「...え、そう？」
『はい。やんちゃみたいなところもあるって知れちゃいました』
無意識に、ふふふと本心の笑みが零れてしまった。
知らなかった先輩の一面を知れて、嬉しい気持ちにならない訳が無い。これに関しては不可抗力のようなものだ。
先輩の傍に、隣にいれるだけでこんなにも楽しいなんて。
そう感じると同時に、少し胸が痛んだ。
無理やりそれを和らげるように、水滴の滴るペットボトルを口につけ水を体に流し込む。
喉が潤うというより、胸が水で満たされるような感覚だけが残ってしまった。
先輩から少しづつでも距離を取ろうと、目線は常に灰原や七海の方へと向けた。これだと話しかけるのにも躊躇するだろうなんて思って。
でも私の考えはいつだって浅はかなもので、
「...なぁ、どっちの俺が好き？」
何故かワントーン高さを低くし、背中に密着されてしまった。
反射するように私の体はビクッと震え、鼓動が余計早くなる。
『あ、の...っ』
「ん、なぁに」
口を開けば出てくるのは震えた声だけ。
後ろからは余裕そうな先輩の声がする。
こんなの、意識せざるを得ないじゃない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 472人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
RURI(プロフ) - むぎさん» あれはもう沼です( ˙-˙ )✧ちなみに私の推しは棘くんです(謎情報) (2022年1月24日 20時) (
レス) id: 8724428549 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - RURIさん» RURIちゃんありがとう♡なるほど同士なんだね…！！映画はもうあれ沼だよね(？) (2022年1月24日 18時) (レス) id: 20f0e797ef (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - ゆたさん» ゆたちありがとう…！！私なりのやり方で一生懸命書いてみた〜♡楽しんで貰えたなら嬉しいな…！ (2022年1月24日 18時) (レス) id: 20f0e797ef (このIDを非表示/違反報告)
RURI(プロフ) - むぎちゃんのじゅじゅ楽しみー！私も映画見に行ってハマってしまったから気持ちわかる！ (2022年1月10日 20時) (レス) @page3 id: 8724428549 (このIDを非表示/違反報告)
ゆた(プロフ) - わあん、むぎたんのじゅじゅ…！楽しみすぎる♡ (2022年1月10日 20時) (レス) @page3 id: acb47aa965 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むぎ
| 作成日時：2022年1月10日 20時
