番外編 ご褒美 ページ29
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「よーし、そろそろ帰るかぁ……」
私の気の抜けた呟きに返答する人は誰もいない。
日常の騒がしい分駐所とは打って変わって、夜は部屋の仕様もあるのかとても落ち着いた雰囲気だ。
(この前桔梗隊長から聞いた話だけど、どうやらここは元々カフェだったらしい。
陣馬さんが湯切りして始末書がどうのとかも言っていたけど、話しているときの怖い顔を見たら詳しく突っ込めなかった。)
凝り固まった肩をぐりぐりと回して大きく伸びをする。
日勤を終えた後、1人残って自習をしていたけれどぷつりと集中力が途切れてしまった。
伊吹さんや志摩さんは、早く帰って休め、と口を揃えて言ってくれたけど、選抜研修の課題から逃げるわけにはいかなかった。
続きは明日、と開いていたノートを閉じて荷物をまとめる。
が、帰る気力も残っておらず、携帯でSNSを開いてだらだらと流し見続ける。
事故だの事件だのニュースばっかりが並ぶ殺伐としたタイムライン。
数十分後、その中で異彩を放つ、カラフルな広告が目についた。
『ハッピーフライデー!今日限定でケーキ全種類半額!』
……どうやら芝浦署からすぐのところにあるお店らしい。
よし。今日は頑張ったしご褒美にしよう。
私は少し浮かれた気持ちで分駐所を後にした。
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「……ううん」
水色に塗装された可愛らしい扉にかかる木製の札は、『CLOSE』。
ガラス張りで丸見えの店内はひとけはなく、真っ暗だ。
到着するまで気が付かなかったのもおかしいが、もう夜の10時過ぎ。そりゃ閉まってるわ。
……ツイてないなぁ。
今すぐにでもその場に座り込みたい気分を抑え、仕方なく財布を開く。
買うのは高校生の時以来だろうか。
店の数メートル先にひっそりと佇むアイス自販機のコイン投入口に手を伸ばしたときだった。
「くっそー閉まってんのか」
……え?
独り言にしては大きな声に思わず振り返ると、そこには見覚えのある姿。
ガタイのいい体には可愛らしい店は似合わない、……と言ったら失礼ですね。
「……陣馬、さん?」
「お、おお?なんだ!Aじゃねえか!」
恐る恐る声をかけると、陣馬さんはぱあっと顔を輝かせて手を振った。
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ココロ(プロフ) - みずえさん» コメントありがとうございます!!2で彼女たちの過去が明らかになっていくので楽しみにしていただけると嬉しいです!!よろしくお願いしますo(^-^)o (2020年9月5日 21時) (レス) id: 34372602a7 (このIDを非表示/違反報告)
みずえ - いつも楽しく読ませてもらっています。夢主と志摩さんの関わりが好きです!2も楽しみにしてます! (2020年9月5日 17時) (レス) id: 8f8fdf8959 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ(プロフ) - ぽんきちさん» コメントありがとうございます(*^o^*)楽しみと言っていただけて嬉しい限りです!!少しずつ明かされていくと思うので、不定期だとは思いますがお付き合いいただけると嬉しいです(*^o^*) (2020年8月20日 0時) (レス) id: 34372602a7 (このIDを非表示/違反報告)
ぽんきち(プロフ) - お話の序盤であった志摩との過去の関係や、夢主の推薦研修の件など色々と明らかになっていくのが楽しみです!!これからも更新楽しみにしています! (2020年8月19日 22時) (レス) id: 60a8b99502 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kokoro | 作成日時:2020年8月11日 17時