想い

#20 ページ20

shima




ついつい問い詰めるような言い方をしてしまった、悪い癖だ。
内心反省しながら彼女に続きを促す。


「……シェアハウスの住人、キッチンの様子、関係性などが大事になるかなと」

「そうだねっ。じゃ所轄にここを任せて、俺らは管理人さんに話を聞こう」


得意げに伊吹が指さした方向には、黄色いタクシー。きっと到着したんだろう。

慌てた様子でおじいさんが降りてくる。かなり動揺しているようだ。



すぐ駆け寄ってこちらですー、と誘導をかけるAさん。腕組みをして隣に立つ伊吹。

雲に隠れていた満月はいつの間にか姿を現し、俺らを不気味に照らし始めた。




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「1本ない、ですね」


青ざめた顔で、管理人は共用キッチンの戸棚を閉める。

普段は2本ある包丁。残念ながら今は1本しか見つからなかった。



小さなシェアハウスの中を案内してもらいながら、被害者の早川さんのこと、そして一緒に住んでいる住人のことを聞かせてもらう。

ここに住んでいるのは、早川さんを含めて男子4人。
いずれも学生で、キッチン、洗面所、リビングは共用スペースらしい。


一通り建物の中すべてを確認した後、リビングへと戻ってきてから俺たちは踏み込んだ聞き込みを始めた。


「連絡がつかない男子学生と早川さんって、どんな感じでしたか」

「森田君……ですか」


3人のうち2人は、俺ら404が訪れた時にはリビングでゲームをしていた。残りの1人は、残念ながら行方が分からない。

が、その2人によると、彼はちょうど事件が起こる前にここを出ていった、ということだった。



「森田君と早川君は、今年の4月にふたりで入居してきたんです。同じ高校だって言ってたかな。今年専門学校1年目。

4月に会ったときは……すごく仲がよさそうでしたけど」


「最近は？」


「早川君はおとなしい性格でして。森田君はちょっと気が強いというか……。入居してきてから関係性は少しずつ変わってきたような気はしていました。友達付き合い？も変わっていたようですし、最近言い合いしてる様子もあったらしい……？ですけどね」


曖昧な言葉が多い。どうやら管理人は、彼らの様子についてあまり把握ができていないようだ。


残りの住人にも尋ねてみたのは良いものの、いまいち手応えがある答えは無かった。





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