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(冴島side)
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「ったく__本当に名取の奴。なんであいつ、あたしにはあんな態度なの?
Aに向ける顔とあたしに向ける顔がぜんっぜん違う!」
正午過ぎ、お昼ご飯を食べた緋山先生と共にA先生の病室を訪れた。
私たちが来た時には、先客がいて。フェロー3人組が来てたの。
その時のA先生と会話している名取先生を見て、まるで違う!って緋山先生はご立腹中。
目をギラギラ光らせている緋山先生を見て、A先生は声を立てて笑った。
___1日の中でも波があって、今は比較的副作用が落ち着いてるらしい。
「何言ってんの、緋山先生。名取先生は一番緋山先生のこと好いてるよ。ねえ冴島さん?」
「そうよ。素直じゃないだけ」
「はぁ!?そんなこと絶っ対にないから!」
私とA先生の言葉にキッと顔を歪める緋山先生。そんな彼女がなんとも面白くてまた笑ってしまう。
「いいなぁ、私も早くそっちに戻りたいや。楽しそう」
ぽん、と何気なく呟くA先生。
___冗談めかしい口調だったけど、本心なのは明らかだった。
不意打ちの言葉に詰まっている私の横で、緋山先生は間髪入れず真顔で反論する。
「何言ってんの、あんたは1か月後には元気に戻ってきてるわよ。
そんときは名取の世話、ぜーんぶAに頼むわ」
A先生が意外な緋山先生の言葉に目を丸くする。そして嬉しそうに口角を上げた。
……ああ、こういう緋山先生のところ、好きだなぁ。
「よっぽど名取先生のこと好きなのね、緋山先生」
「……冴島ぁ!?いくらなんでもその発言は許さないわよ!撤回しなさい!」
「うわー冴島さん妊婦さんなんだからね?産婦人科専門医さん、暴れちゃダメ」
ゆるりゆるりと穏やかな時間が流れる。
そんなとき、休憩終了を知らせるように緋山先生の携帯が音をたてた。
ふと窓の外を眺めると、晴れた空にヘリの姿が映る。
___戻らなきゃ。
「はい。……下水道工事の事故ね。分かったわ、冴島と戻る」
一瞬にして緋山先生の顔が曇る。水の事故は厄介だ。
「……ん」
行くよ、と椅子を片付ける緋山先生の後に続こうと立ち上がった時、下腹部に違和感を覚えた。
___痛んだ?
「冴島さん?」
「ううん、何もない。じゃあA先生また後でね」
心配そうに覗き込んだA先生に別れを告げ、急いで病室を出た。
この後起こることを、まだ私は知らなかった____。
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ココロ(プロフ) - あみさん» いいえ〜〜!こちらこそリクエストありがとうございました(^O^) (2018年9月22日 21時) (レス) id: 34372602a7 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - リクエスト書いていただけて感謝感謝です( ; ; )ありがとうございます!これからも応援してます! (2018年9月22日 16時) (レス) id: d3315f5237 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ(プロフ) - ゆめさん» こちらこそいつもお読みいただき本当にありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです!!(^O^)完結まで精一杯頑張ります!!!! (2018年9月17日 17時) (レス) id: 34372602a7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 更新ありがとうございます!学生さんとお見受け致しますが、きちんとした日本語そして文章力で大変読み易くて楽しませていただいております。お忙しいとは思いますが、完結まで心から応援させていただきます。頑張ってください!∩^ω^∩ (2018年9月17日 0時) (レス) id: edc643c87b (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 作品みてくれるの!?ありがとう!まじ感謝。 (2018年9月12日 18時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kokoro | 作成日時:2018年9月11日 18時