恋じゃない…… * Kento.N

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Kento side









『あっ、ここだから……』









お店を出た頃にはもう日は沈んでいて、

気づかないうちに時が過ぎていたことを思い知らされた。

だから申し訳なくて家まで送らせてもらった。









「ほんとごめんね……」









お店を出た時にも、帰り道にも

何度も申し訳なくて謝った。









『いやいや、こっちこそ奢ってもらったうえに
定期の範囲外なのに送ってまでもらって……
本当にありがとうございました…!!』









そう言って許してくれるAちゃん。

でも、俺が謝ってるのはAちゃんにだけじゃないんだよ……









「……菊池、怒ってるかな？」









そう、思ったよりも話してしまったから

本当に時間的にやばくて怒っていても無理はないと思う。

そうなると、やっぱりAちゃんにも被害が……









『風磨？大丈夫、私が何とかするから！』









そう言って少し無理して作られた笑顔。

こんな薄汚れた現代でも、月の光は綺麗に彼女を照らして

微かに震えているのがすぐわかった。









「ねぇ、連絡先交換しない？」

『えっ…………………？』









そう言うと少しうろたえたAちゃん。

だけどゆっくり可愛らしいケースに入れられた携帯を出した。

そして、お互い連絡先を交換した。









ちょうど、交換し終えたその時だった。









Aちゃんの携帯が急に震えだした。









『風磨………………』









そう、ぽつりと震えながら呟いた。









『ごめんね、風磨が待ってるから……!!』

「あ、うん……」









少し早足でマンションの中に入っていこうとする彼女。

その姿が少し、いつにもまして小さく見えて……









｢Aちゃん……！｣









怖くてつい、後を追いかけて腕をつかんで止めてしまった。









『なっ、なに……？』









思ったよりはやく追いついた俺に

びっくりしたような表情をしたAちゃん。









「何かあったらいつでも連絡してね？」









そう、アイツに聞こえないよう小さく声をかけた。

その言葉の真意が伝わったのか伝わらなかったのか……

それはわからないけれどそれでもはっきり俺の目を見て









『うん、ありがとう笑』









どこか安心したような……

そんな表情をして階段を駆け上がっていった。









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