黄金の雨は知っている【探偵チームKZ事件ノート】

事件の前方 ページ26

私はタオルを取って、若武くんの肩にかける。


A「私が夢を叶えられない事ぐらい、もう知ってるでしょ？」


若武くんは目を伏せる。


若武「悪かった」


A「いいの」


そう言って再び若武くんの隣に座る。


A「だからさ、その分、他の人には夢を叶えてもらいたいんだよね」


若武くんは目に赤い炎を浮かべた。


若武「俺、将来、絶対にプロになる」


私はフッと笑って「頑張ろうね」と言った。


＊＊＊


KZ技能検定まであと2日。


探偵チームの方の調査は思ったよりスムーズに進んでいた。


まず、アーヤと上杉くんが掴んだ情報では、野村は何らかの目的のために10人のカルテを保存していた。


その10人の共通点は高砂地区に住んでいるということ。


調べた結果、そこにはメッキ工場があり、経営者は黒木くんが調べていた飯田であることが判明。


飯田家は4人兄弟で、順に一郎、二郎、三郎、四郎という分かりやすい名前。


でも一郎は借金をして、そのまま失踪。


二郎は、その直後に自 殺。


三郎はメッキ工場を建設するも病死。


後の四郎はメッキ工場を継ぐことになった。


なんだか複雑な家系。


さらに黒木くんの調査によると、3億円強奪事件は一郎と二郎がやったのではないかということだった。


一郎の借金のことを考えると、考えられなくはないし、失踪したのも丁度、その時期。


こんな偶然はないだろう。


強奪事件の犯人は、身元不明だったけど、それは一郎に違いない。


消えた3億円は、二郎がどうにかしたんだ。


でも兄の突然の死にショックを受け、自 殺。


盗んだ金を利用して、三郎がメッキ工場を建てた線も考えられる。


兄弟である四郎はメッキ工場を継いでいるのだから、このことを知っているに違いない。


これは四郎に話を聞いた方が良さそうだ。


あと、臭いの正体も分かった。


ボストンバッグについていた臭いはメッキ工場のものだということ。


それは鉱滓で、毒性のあるもの。


微量で致死してしまうほど毒性が強いらしい。


小塚くんの考えでは、メッキ工場はそれをきちんと処理しておらず、それが風で舞い上がって広がり、皮膚疾患を引き起こした患者がいるのも納得できた。


野村はそれを知って、四郎を強請って金を得たってわけ。


全てを把握した私たちは、現場へ行くことに。


KZ技能検定が近くて、若武くんのことが心配だったけど、リーダーがいないとカッコがつかないということで、調査へ。


そして、私たちはメッキ工場へと忍び込んだ。

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