58:公園 ページ22
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「若武のばかやろう」
上杉が派手に頭を小突いた。
「公園のどこで会うのか、なんで決めとかなかったんだよ。こんなに広いんじゃ、張り込めないだろーが」
南街公園は、門から左の方に一通りの遊具が置かれていて、そのむこうが砂場、さらにむこうは小高い丘で、松の木がいっぱい植わっていた。
右手の方は散歩道で、曲がりくねった道が桜の木の間に続いている。
「この公園、あの丘の裏側にも出入口があるよ。丘のぼりにチャレンジしたい子は、そっちから入るんだ。まぁ丘の上にいれば、散歩道のほうまでふくめた公園全部が見渡せるけど」
小塚の話を聞いて、若武がぱちんと指をならした。
「俺が丘に登る。それで山崎の姿が見えたらすぐ、散歩道のほうに誘うから、諸君は、そっちに移動して張り込んでてくれ。細かい位置は、携帯でやり取りして決めよう。ただし俺は、YESとNOしか言えない。山崎に聞かれるからな。固有名詞は、諸君の方から出してくれ。いいか」
指示通り動くため、全員が自転車にまたがったが、その必要はなかった。
山崎勉は一足先に丘の上におり、こちらに大きく手を振っていたのだ。
「あいつ、なにしてんだ」
丘を見上げた黒木がつぶやく。
山崎勉は、1本だけ離れた松の枝に輪にしたヒモをかけ、その中に自分の首を入れていた。
そして、そこからぶら下がったのだった。
その光景を見て、私たちは凍り付く。
「3分以内なら、助かる可能性がある。急げ」
丘を目指して一斉に駆け出し、ぐるぐると螺旋状の道をのぼっていく。
「山崎、大丈夫かっ!?」
叫んで木のそばに駆け寄っていく若武の後ろに続く。
「しっかりしろ」
地面に倒れていた山崎勉を若武が抱き起こす。
「人工呼吸とか、したほうがいいのか」
「わ、かんない」
小塚はすっかり怯えてしまっていた。
若武も興奮して正常な判断が出来ていない。
黒木はすかさず携帯を取り出し、警察と消防に連絡。
「ど、どうしたら………」
若武の肩を後ろから掴み、山崎勉の容態を見る。
『山崎君、山崎君!』
彼の首に手を当て、脈がないことを確認。
そして、縄で絞められた跡を発見したが直ぐに違和感に気づいた。
木の上から首を吊ったなら、斜めに跡がつくはずなのに、平衡についている。
これは後ろからしめた時につく跡だ。
しかし、今それを考えている余裕はない。
左手で彼の鼻をつまみ、息が漏れないように唇を重ね合わせる。
目いっぱい息を吹き込んだ後、両手を組み心臓マッサージを開始する。
お願い……!息をして………!
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??? - 今頃、KZ✕コナン と言う事に気づいた。(バーボンの所で気づいた)) (2022年12月18日 22時) (レス) @page25 id: a3d070ab9a (このIDを非表示/違反報告)
ピンカン(プロフ) - 応援してます!!! (2022年3月24日 12時) (レス) id: 4d85ff89bb (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - KZ×コナン!めっちゃ面白いです!応援してます! (2022年3月10日 13時) (レス) id: 8e64252870 (このIDを非表示/違反報告)
絵 - 最高です!これからも応援しています (2021年11月10日 21時) (レス) @page21 id: a4d316c6c5 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 面白かったです!頑張って下さい! (2021年3月11日 19時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こはる x他1人 | 作成日時:2021年3月11日 17時