彼岸花が咲く頃にー壱ー【鬼滅の刃】

38輪ー拉致ー ページ39

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私が連れて行かれて数分後、その場に炭治郎が戻ってきた。何も知らない炭治郎は、明るく伊之助に、鬼を倒したことを報告する。


「伊之助！お前のおかげで、倒せたぞ！」


伊之助が喜ぶことを期待していた炭治郎だったが、伊之助は背を向けたまま、私が連れて行かれた方向を見ていた。


「あれ…。Aは？」


私が居ないことに気付いた炭治郎は、伊之助に問う。


「………連れて行かれた」


「え？」


「鬼に…！！連れて行かれた！！」


私が鬼に連れて行かれたことを知った途端、炭治郎の顔から笑顔が消えた。顔色が、どんどん蒼くなっていく。伊之助は二本の日輪刀を、悔しそうに握りしめ、怒りで体を震わせていた。


「お前と合流してから、進めって…」


どんどん声が小さくなっていく伊之助。炭治郎は、励ますように、伊之助の肩にポンと手を置く。暗闇の中に、1つの太陽が輝いた____。


「行こう」


太陽に照らされた伊之助は、「うおぉおお！！」と気合いを入れ直して、炭治郎と共に山の奥へと進んで行った。一方、私はと言うと_____。


「全集中…。花札の呼吸・陸(ろく)ノ型。牡丹(ぼたん)・猪鹿蝶(いのしかちょう)！！」


「シャァアアッ！！」


鬼の体に、刀を突き刺す。しかし、鬼の体は非常に硬く、刃が通らない。


ピシッ_____。


嫌な音が耳に入った。鬼から距離を置き、刀を見てみると、先端から中部にかけてヒビが入っている。いずれ、こうなることは分かっていた。この刀は、2年もの間、十分な手入れが出来ていない。刃こぼれも酷く、目一杯に力を入れないと、頸を切ることは出来なかったほど。


(分かっとったけど……。今かぁ…)


下唇を少し噛む。次に鬼の体に刀を突き刺せば、間違いなく折れる。それだけは避けたい。ということは、頸を切れないということ。刀に負担がかからない技と血気術で戦うしかない。


「血気術_____」


そう呟いて、両手で三角の形を作った。


「極光(きょっこう)・柘榴石(ざくろいし)」


赤や緑、黄色などの様々な色をした無数の宝石のつづらが鬼に降り注ぐ。しかし、体を貫かれても、鬼は宝石を噛み砕き、素早い動きで此方(こちら)に向かってきた。


「包守(かねもり)！！」


ヒュッと息を吐き、紅玉(こうぎょく)の壁を作る。とにかく、炭治郎と伊之助が駆けつけてくれるまで、耐えるか、どうにかして頸を斬るしかない。そして、絶対、捕まるな____。

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