貴方の壊れた部品、直します (ページ6)

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思い出せなくて⑤ ページ6

私は悲鳴を上げかけた。ずっと、ずっと、昨日までずっと一緒に行動してた、優しそうだった彼女が、まさか私を突き飛ばした犯人だったなんて＿＿。信じたくなかった。

でも信じるしかないのだ。今、目の前で"僕"が飛ばされる瞬間を見たのだから。私はかたかたと体が震えるのを必死に抑えていた。

私は目の前で起きたことを確認しようと、もう一度顔を上げる。すると今度はまた違った光景が見れた。美澪が、泣いていたのだ。私を突き飛ばしたあの手を、地面に叩きつけて。

理解が出来ない。頭でそう思っていると、美澪が言葉を零す。

「ｯ……ごめんね、ごめんね沙紀。高校の友達に言われて、急にいじめられて。やれって言われて……私断れなかった。ずるい奴でごめんね、ごめんね………。」

あぁ、そういう事だったのか。美澪の言葉を聞き、ようやく理解する。あの子は友達に言われてやったのか。いじめられてたのか。後腐れないよう、もう二度と私が近づかないよう……笑ってたのか。

その瞬間、今まで忘れていたこと、全て思い出した。ぽろぽろと目から雫が落ちる。海の中なのに、雫は垂直に落ちていく。思わず駆け出し、掴めないはずの幻像に手を伸ばす。すると、泣き叫んでた美澪がふいにこちらを向く。

その瞳にはしっかりと、私が映っていた。

「沙紀………？」

「美澪、"僕"が見えるの？」

「当たり前だよ。どうしてここに……？さっき私が……ｯ…。」

「泣かないで、美澪。僕、さっきの言葉を聞いて、全部思い出せた。美澪のおかげで……」

「でもっ……私は貴方を……っ」

「…確かに、そうかもしれない。でも私は今はぴんぴんしてる。それに、美澪ともまた仲良くしたいと思ってる。だから……。」

ーもう一度、やり直しませんかー

私がそう呟くと、美澪は泣き顔をくしゃっ、と歪めて笑顔で頷いた。私が美澪に触れようとすると、美澪は笑いながら首を振り、上を見上げる。

「ほら、貴方の大切な心を直してくれた人が呼んでるよ。貴方はもう行かなくちゃ」

「え、でも待っ……」

「待たない。向こうの私に会ったら、宜しくね。」

そう言うなり彼女は愛らしい笑みを浮かべて、手を振った。私の体がドンドン透けていく。私は、泣きじゃくりながら、彼女に言いたかったことを告げる。

「ありがとぉぉぉぉ、美澪！大好きだよ！！！」

聞こえたかどうかは分からない。でも美澪の声は確かに聞こえた。

"私も大好きだよ"と。