貴方の壊れた部品、直します (ページ2)

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思い出せなくて① ページ2

とある森の中。私はゆっくりと、しかし確実に足を進めていた。

確かこの近くだよね……と地図を見ながらあたりを見回した。しかし、特に何かあるわけでもなく、ただただ木々が広がっていた。

「本当にここなのかなぁ……？」

友達から貰った地図と情報によればたしかにここら辺なのだが……。帰ろう。そう思いとくるっと後ろを向くと、そこには知らず知らずのうちに大きな建物ができていた。アンティーク調の、時代を感じる建物だ。

「え、あ、うわっ！！え、なんで急に！？」

思わず私は尻もちをつき、自分の頬を引っ張った。しかし、目の前の建物は消えず、ただ悠然と立っているだけだ。素通りしてきちゃったのかな、と思い直し、その場で草を払い、建物の近くに行く。

見上げるほどの高さ、ドアの前に小さく奇妙に咲く花々。ドアに掛かっている【OPEN】の文字。やはりここが噂の【白百合堂】なのだろうか。

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私がこの話を聞いたのは、つい先日のこと。

私は交通事故にあい、記憶をなくしてしまった……らしい。目を開けた時には病院のベッドに横たわっていた。その時、自分は何者かすら分からなかった。横にいたのは、〈親友だった〉らしい可愛らしい女の子だった。

回復してからも、〈親友だった〉女の子ー美澪ーは私に優しくしてくれた。どんな些細なことでも、優しく教えてくれた。

しかし、彼女は私が聞いても答えてくれないことがいくつもあった。それら全て、私の記憶に関係することなのだと言う。何故教えてくれないのか。そう聞くと彼女は黙りこくってしまった。

そんなある日。私が自分の記憶について、彼女に尋ねていると、彼女は小さく息をつき、白い名刺のようなものを私に渡した。

「そこに行ってみて。きっと何か分かる筈だから」

彼女はそう言い、その日は私に別れを告げた。

名刺に書かれていたのは〈白百合堂:壊れた部品直します。〉の文字とともに〈八橋叶〉という固有名詞だった。

地図とともに手渡されたその名刺をマジマジと眺めた後、私はよし、と意気込んでその場所へと歩いていった。
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というわけなのだが。そもそも壊れた部品ってなんなのって感じで、ここに来る途中考えに考えたのだが、結局結論が出ないまま来てしまった。

私が店の前で唸っていると、不意にドアが開き、目の前に整った顔立ちのイケメンが現れた。イケメンは無愛想につっけんどんに私に言い放った。

「何かうちの店に御用ですか」