駆紋家の妹ちゃん。 【仮面ライダー鎧武】【駆紋戒斗】

バロンＶＳ鎧武。 ページ16

『ただいま〜』

Aが帰宅すると、戒斗は晩ご飯の下拵えをしている所だった。

戒斗「………A」

戒斗が、ニンジンの皮を剥きながら徐ろに口を開いた。

『どうしたの？お兄ちゃん』

戒斗「今週末の日曜日、また差し入れお願い出来るか」

『差し入れ？ダンス大会でもあるの？』

Aが尋ねると、戒斗は頷く。

戒斗「鎧武とのリベンジマッチがあってな」

『そうなんだ！じゃあ私も差し入れ作り頑張らなきゃ』

Aはガッツポーズを作る。

『あ、そう言えば鎧武の人達って何人位居るの？』

戒斗「１０人居ない位だな。何だ？」

『鎧武に知り合いが居るから、鎧武への差し入れも作ろうかと思って』

戒斗「ふん、本当にお前は甘いな」

戒斗に言われ、Aは微笑む。

優しいって言ってくれているのだと分かっているから。

＿＿＿＿＿＿＿日曜日。

Aは重箱を片手に会場を訪れた。

バロンも鎧武も人気の実力派だからか、観客の数もかなり多い。

Aは最前席を確保して、ステージの開始を待った。

最初に出て来たのは鎧武の方だった。

リズミカルな音楽に、軽快なステップ。

明るい雰囲気は、会場を盛り上げた。

優しく温かいダンスだが、ふわふわした物では無くキレがある。

確かにこれならバロンに勝っても可笑しくないと思った。

続くバロンは、クールで鋭さのあるダンスだ。

難しい動きまで軽々と熟してしまう。

一気に人の目を惹き付けるパフォーマンスに、Aはわくわくした。

だが、途中でブツリと音源が止まる。

何があったのかと思うと、会場の端っこの方に居た観客が喚きながら一斉にこちらへと駆け込んで来る。

逆側の観客もゾロゾロと走って行った。

Aは訳が分からずその場に立ち尽くす。

逃げて来た人が居た方を見れば、何かがこちらに近付いて来ていた。

よく見たら得体の知れない人影が見える。

人………では無いが、獣とも言えない。

怪物、と言えば近いだろう。

でももうどうすれば良いか分からず、足の力が抜けてその場に座り込む。

人気が無くなった会場では、怪物はAの方へ歩いて来る。

Aは怖くて、目を瞑った。

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