5,散歩日和 ページ5
いつの間にか変わっている日常は、至る所にある。
高順がAのことを厳重に見張っておく必要は無くなった。
またAにも、脱走しようなどと思わずとも、今ある自由に、ある程度の満足感はあった。
『高順!!今日は絶好のおさんぽ日和よ!!』
高「お待ちください、A様。外は肌寒いですから、1枚上に羽織ってください。」
そう高順が羽織を持って追いかけるも、Aは一度も言うことを聞いた試しが無い。
お散歩日和と言えど、天気が良いだけであって、季節的には焜炉にお世話になりたい時期だ。
結局聞かずに部屋を飛び出すAを、困り顔の高順が、仕方なく追いかけるまでが彼らの日常である。
『あら!!こんなところに山茶花が咲いてる!!去年は見かけなかったから、誰かが植えたのかな?』
高「そうかも知れませんね。映える色をしていますから、随分と華やかです。」
『そうね。特に冬は枯れ木が多くて物寂しいから、活気付けるには丁度いい!』
山茶花に負けじと映える色の髪と瞳を持ったAが、活気溢れる笑顔でそう言った。
高「、、、、さてA様、羽織を羽織ってください。」
『やだ。寒くないもん。、、、、ひらひらして邪魔だし。』
絶対に本音は後者の方だろうと高順は思った。
『あ!!見て高順!!蝋梅が咲いてるわ!!』
高「おや。これもまた《雪中の四友》の花でしたね。」
『でも、確か蝋梅は庭に植えると縁起が悪いんだよ。実がなる花だから。どうして植えたのかしら?』
もしや宮殿の誰かに恨みでもあるのか、、、と、宮殿の大人ならではの汚い話が2人の頭を過ぎる。
高「撤去するよう頼みましょうか?」
『ううん。そんなの蝋梅が可哀想だわ。でも高順、気を付けてね。この花、有毒だから。触ると強直性痙攣を起こすの。お手入れをする人にも言った方がいいかな?』
高「、、、、強直性痙攣ですか、、、」
何だか最近そのような騒ぎが起こったような、、、と高順は身震いした。
此方が撤去を頼まずとも、今年いっぱいでこの木は無くなりそうだ。
少なからず蝋梅を愛でているAには申し訳ないが。
『もしものことがあったら、私がお手入れする!』
高「それは一番ダメです!!!!!」
229人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かんちゃん | 作成日時:2024年3月4日 0時