3,お目付け役 ページ3
高「、、、、処で、何方へ?」
『っえ、えぇと、厠に、、、、』
高「厠なら、あちらです。」
そう言って高順が指したのはAの左後ろの扉。
『で、でもわたしこっちからいきたいなぁ、、、、』
高「すみません。それはなりません。」
『、、、、、、』
Aは思わぬ敵の登場に唸った。
行く手を阻み、決して外に出させまいとするだけでなく、ジリジリと部屋の中へ誘導される。
そして今、Aの希望も虚しく、扉が閉められてしまった。
容姿からするに、自分より幾つか上程度だと言うのに、そこらの大人よりも彼の目は掻い潜れそうに無かった。
威嚇混じりに見上げるAと、静かに見つめ返す高順の睨み合い(一方的)は、Aが折れる形で終わった。
大人しく筆を握り、漢書に目を通すも、全く話が入って来ない。
最早暗号だ、とAは考えることを放棄した。
この事柄の一連を、高順が見逃す筈が無かった。
扉の前に見張るように立っていた高順がスタスタと此方に歩いて来たかと思うと、ずいっと漢書を覗き込んできた。
『わ』
高「失礼しました。お困りであれば、私に仰って下さい。」
多少強引な所が唯一、高順がまだ幼いと認識できる。
『なんでも?』
高「はい。何でも構いません。」
『べんがくやだ。』
高「頑張りましょう。」
『おもってたこたえとちがう!!!』
高「私は皇女様の親御様にはなれませんので。」
『じゃあがおしゅんはなんなの?』
高「皇女様のお目付け役兼教育係と言った所でしょうか。」
『おめつけやく、、、きょういくがかり、、、、』
何をするのか具体的には分からないが、とても嫌な響きがしたので、Aはガッカリだった。
お友達になりに来てくれたのかと思ったのに。
『それじゃあがおしゅんは、とってもかしこいのね。だってわたしよりはお兄さんだけど、まだこどもでしょ?』
高「それ程でも御座いませんよ。勉学に励めば人は大きく成長するものですから。それに、3つも年が離れていれば、見えるものも考える事も、大きく違います。」
『へぇ。』
高「処で、皇女様は読み書きが出来ると聞きましたが、左様ですか?」
『もちろん!!かんぺきなのよ。』
がおしゅんのなまえもかいてあげる、わたしのなまえはこうかくのよ、あそこにいるじじょのなまえは、、、
と、本人も気付かぬ内に夢中になって筆を取っていた。
その日、部屋の片付けをしていた侍女が、減った墨汁に嬉し涙を流したのはまた別の話___
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作者名:かんちゃん | 作成日時:2024年3月4日 0時