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「メイク落としはこれ。洗顔料はこっち」
綺麗に整頓された道具たち。
「で、左からシャンプー、コンディショナー、ボディーソープ。タオルはそこから使って」
彼が指さす先を目で追った。
「ロンTならサイズ大丈夫だよね。寒いからパーカーも。はい、どーぞ」
「あ、ありがとう」
あっという間に脱衣場の扉が閉められ、彼の足音が遠のいた。
メイク落としから始まり、スキンケア用品が一式揃っている……
この状況から、女の子の気配を想像するなという方が無理。
でも、あの美肌を思い浮かべてみよう。
全て彼のものである可能性は限りなく高い。
そういうことにしておこう。
私はスプレーで固めた髪の毛を洗いながら思う。
"身体綺麗にしてもらわないと俺が困る"
って一体どういう意味?
あの屈託のない純粋そうな笑顔は、実は遊び人?
そんな失礼な想像もすべて洗い流すようにして、シャワーを浴びた。
そして――
今、ベッドの中。
全身三宅くんの匂いに包まれて。
「目、閉じて?」
「ん……」
ギュッと力を込めて目を瞑る。
目元にシワがよるほど力を込めて。
「フハッ。なんで?眠くないの?」
ケラケラ笑う三宅くんは、ベッドの下の床にいた。
「驚くほど目が冴えてるよ」
"身体綺麗にしてもらわないと俺が困る"
それは綺麗好きの彼の、言葉通りの意味だった。
「ねぇ、もしかして掃除してくれたの?」
綺麗好きの三宅くんは、お風呂上がりに毎回お風呂掃除をするそうで、そこで気がついたらしい。
念入りにスクイージーまで使って水を切ってカラカラにするんだって。
「ごめんなさい」
勝手に開けるのは申し訳ないと思いつつ、
髪の毛……だけではない可能性があるので、私はお風呂から出る時、排水溝に溜まったゴミを取り除いて自分が持っていたゴミ袋に捨てた。
「ゴミなんかお土産にしなくていいから、ここ捨てといて」
笑いながら、「そんな人初めてだわ」と付け加えられた。
他の人ってどんな人なんだろう。
やはり女の子を想像してしまう。
彼のお風呂に入る関係の女の子……?
これ以上、想像するのは止めておこう。
「ドレス、すっごい似合ってた」
「褒め上手だね。その気になっちゃう」
「その気って?」
「あの服似合ってたのかも、って」
「謙虚すぎ。Aちゃんは美人だよ?」
口が上手い。
バンドマン。しかも、ベーシスト。
完璧なまでにB。
私の心の中のシグナルは、点滅の赤。
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ヨ-リン(プロフ) - 西鶴さん» 西鶴さん、いつもありがとうございます。同じくです。ずっと音楽や映像を見て浸っています。 (2022年3月17日 23時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
西鶴(プロフ) - (元 藍琉)私も未だに未練タラタラでYou○ube ○usicで音楽聴いて、You○ubeで動画見て、CDを流しての繰り返しです。 (2022年3月12日 14時) (レス) @page18 id: 6dde35b37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨーリン | 作成日時:2022年2月22日 23時