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階段の鳴る音は2人分。
夜だと余計に響いた。
登った先で、今夜は右側じゃなく左側の扉の向こうへ。
お邪魔するのは、これが初めてだった。
お部屋の中は、彼から聞いた通り整理整頓され、お掃除も行き届いている。
なんだか気持ちがふわふわしてしまう。
仲良しのお隣さんと言いながら、
そういえば三宅くんについて私はなんにも知らないんだ。
「あの、本当にごめんなさい。さっきは失礼なことを言ってしまいました」
私はもうただひたすらに謝るしかなかった。
三宅くんが、まさかアマチュアバンドのベーシストだったとは。
見た目の若さから、てっきり学生さんだと思い込んでいた。
夜勤バイトしたり、今日みたいにライブで遅く帰ったりしているのに、お肌はツルツルなんだもん。
「いいのよ。俺も言ってなかったもんね」
「それにしても……本当にごめんなさい」
「いいって。そりゃ歴代の彼氏がバーテンダーと美容師で、しかも、他の女の子ができて別れてんだからそういうことも言いたくなるじゃん」
「今さ、サラッと傷口に塩を塗ったよね……?」
「えぇ?」
白湯の入ったマグカップに、ふぅっと息をふきかけながら笑っていた。
「でも話聞いてくれて、そんなふうに笑い飛ばしてくれたからスッキリしたよ。ありがとう、三宅くん」
歴代の彼氏が、美容師とバーテンダーそろい踏み。
本当に偶然。
いつも最後には私以外の誰かを好きになって終わってく。
それも偶然。
今回のマモルは美容師のたまごだった。
でも、その夢を諦めた彼は現在バイトすらしていない、いわゆるニート。
そして半分、居候。
私の付き合う人ってそんなだから、周りの友達は私に気を使って恋バナ禁止の風潮がある。
「家に帰ってみたら彼氏が私の部屋に浮気相手連れ込んでよろしくやってました!なんてこと、誰にも言えないもん。
三宅くんがいなければ、私ひとりで抱え込んでたと思う」
あったかい紅茶を啜り、ハァとため息をついてしまった。
「だって私、今日は友達の結婚式の帰りだったんだよ?」
「そりゃもう天国と地獄じゃん」
「でしょう?ああ……最悪」
「お風呂で綺麗さっぱり洗い流してきなよ」
今お湯入れるね、と彼は席を立った。
「ありがとう。でも、そんな甘えちゃ悪いよ」
「うちで寝るんなら、身体綺麗にしてもらわないと俺が困るんだけどー」
彼は冗談ぽく文句を言って、私の頬を指でツンツンとつついていた。
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ヨ-リン(プロフ) - 西鶴さん» 西鶴さん、いつもありがとうございます。同じくです。ずっと音楽や映像を見て浸っています。 (2022年3月17日 23時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
西鶴(プロフ) - (元 藍琉)私も未だに未練タラタラでYou○ube ○usicで音楽聴いて、You○ubeで動画見て、CDを流しての繰り返しです。 (2022年3月12日 14時) (レス) @page18 id: 6dde35b37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨーリン | 作成日時:2022年2月22日 23時