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今朝ぶりに彼の家の中にお邪魔した。
昨晩と同じく綺麗に整えられた部屋だった。
そこで一通り話をして、差し出された紅茶を啜る。
彼から頼まれたとはいえ、くだらない私たちのストーリーを聞かせてしまったことに若干の後悔はある。
「ホントむちゃするんだから」
ぶつくさ言いながら、三宅くんが私の指から絆創膏を剥がし、消毒液を垂らした。
今朝の「ガシャーン!」は、私のマグカップが割られた音だった。
ペアのマグカップだったそれを見つけた相手の女性が投げたらしい。
彼女は、本気でマモルの家だと信じていたと言うから驚きだ。
マモルの巧みな話術と、それを盲信する彼女には、もはや感心するほどである。
それを拾い集めた時、うっかり切ってしまったのだ。
「ごめーん」
「本当に思ってんのかよ」
「思ってるよ!本当にごめんなさい」
三宅くんに対しては、たくさんの迷惑をかけたから本当に心からの謝罪をしたかった。
なのに、あの2人のことを頭に思い浮かべながら言ったから、軽いテンションの「ごめーん」になってしまって。
私が焦ると笑う彼。
「しょうがないなぁ」といいながらも、新しい絆創膏を丁寧に巻き付けるその手は、お世話好きのお兄さんみたい。
「これでよし」
「ありがとう」
私の右手を、彼が両手でそっと挟んだ。
じんわり温もりが伝わってくる。
「……ん、なに?」
それをじっと見ていたら、彼の綺麗な瞳が私に向いた。
「三宅くんの手、大きいね」
「そお?」
「やっぱベース弾いてると、マメとか水膨れとかできる?」
「今はないかな。昔はよくできてたけど」
自分の手のひらに視線を落としながら、ちょっとだけ恥ずかしそうに言っていた。
「触ってもいい?」
「ええ?」
なんだよ、なんて言いながらも手を差し出してくれる。
「あれ、意外と柔らかい!」
「マメとかできてた硬い皮も剥けて、柔らかくなったかも」
「そうなんだ」
彼の手のひらを、貼り替えてもらったばかりの絆創膏付きの親指で、ふにふにと触った。
節のある指は男性的。
分厚いけど、柔らか。
ベースの重低音を響かせてきた手。
まるで職人だと思った。
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ヨ-リン(プロフ) - 西鶴さん» 西鶴さん、いつもありがとうございます。同じくです。ずっと音楽や映像を見て浸っています。 (2022年3月17日 23時) (レス) id: 3d151d95ac (このIDを非表示/違反報告)
西鶴(プロフ) - (元 藍琉)私も未だに未練タラタラでYou○ube ○usicで音楽聴いて、You○ubeで動画見て、CDを流しての繰り返しです。 (2022年3月12日 14時) (レス) @page18 id: 6dde35b37e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヨーリン | 作成日時:2022年2月22日 23時