あなただけが好きな人。【橙】

. ページ36

｢こらぁー！ 夜遅いんだから騒がないっ！！｣
｢……ごめんなさい｣


ブクブクブク……



どうしよう。お母さん確実に誤解してる。
こーじさんは彼氏じゃない。だけど魅力的な門限延長を無くされたくないから本当のことも言いたくない私はずるい奴。



彼氏なんて今まで漫画やドラマでしか縁のなかった存在で、お母さんに彼氏と言われてそれに異常に反応する。


こーじさんが彼氏？

私の彼氏？

それは絶対にない事実なんだけど、考えるとドキドキが加速する。

最近の私は変だった。


こーじさんに出会ってから、こーじさんのことばかり気になったり。
連絡先を初めて知りたいと思って聞いた時は死ぬかと思うくらいドキドキして。
返事が来ないことにヘコんだり。
こーじさんがバイト先に来ないかと、ずっとソワソワしたり。
こーじさんに頭を撫でてもらうと嬉しくて嬉しくて、へにゃってなっちゃうのって……


あれ？ あれれ？
これってもしかして私は、





｢こーじさんを……好き…？｣



顔が真っ赤に火照る。

気づいてしまった、こーじさんを好きなんだ。


ナンパで出会って軽い印象しかなかった。でも話てみたら予想外に優しくて誠実な人だった。
知らず知らずに惹かれてた。
恋なんてしたことないから、だから気づかなかっただけで、このドキドキが恋なんだと気づいてしまった。



｢どうしよう……｣





この初めての感情、これって私にとって初恋になるのかも。浴槽の縁に頭を乗せ、はぁと溜め息を吐く。






｢こんなのどうしたらいいかわかんないよ……｣

03 / 恋せよ乙女→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す