あなただけが好きな人。【橙】

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｢で、何の話？｣
｢えっと……｣


言えないでしょ。ナンパされた話なんて。


ラウとは小中高と一緒の腐れ縁で、昔から何かと私に関わってくる。
運動が苦手な私は、体育の授業のたびに何処かに小さな傷を作った。するとラウは毎回飛んで来て｢鈍臭いね｣と、私を弄る。
それが悔しくて我慢するんだけど泣いてしまうと｢泣き虫｣とまた弄られる。


だから言えない。
言えば絶対揶揄うに決まってるから。



｢この間二人で買い物してたらナンパされちゃいました！｣
｢は？ ナンパ？｣


………言ってしまった美波さん。


絶対バカにするよ。額に手を当て溜め息を吐く。


｢そっ！ もうすんごい二人共イケメンなのよ。年上で余裕ありますって感じだし。ね！｣
｢う、うん…まぁ｣


言われてしまっては今更隠しても意味ないので、素直に認める。
今か今かと構えて待っていたのに、ラウは唇を尖らせたまま一向に話さない。


｢ラウ？｣

ガバッ！

｢わっ、なに？ 急に立たないでよ！？｣


ラウの顔を覗き込もうとしたと同時に、ラウは立ち上がった。

｢煩いよ！つうか美波は彼氏いんのにナンパされてんじゃねえよ！｣
｢はぁ？ 私の勝手じゃん！！ばか！｣


もしもし、お二人さん。
教室内の注目バンバン浴びてますからっ！


｢あ？ お前こそ俺をバカって呼ぶんじゃねえよ！この間の数学のテスト、俺よりはるかに下だったくせに！｣
｢お前って言わないでよ！てか英語は私の方が点数良かったし！ハーフの癖に英語苦手とか意味わかんないから！｣
「日本育ちなんですぅ！」


喧嘩の理由が低レベルだ。

もう他人のフリしようかな。

ラウは怒りながら去って行ったけど、この場に残された私たちはやりづらい。


｢なによあれ？ ラウのやつ生意気！見た目は悪くないのに性格があれじゃあね」
｢美波が余計なこと言うからでしょ」


黙っていればいいのに。
まあ、最終的に私へ矛先が向かなかったから良かったけどさ。

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