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ぐりぐりと撫でられ、結った筈の髪はとうの昔に解かれて思い思いにアレンジされていく。少し嫌がって動いてみても「めっ!」と叱られるのだから、何かこちらが悪いことをしているような感覚になって動けず小さくなっていた。
かわいいかわいい、と愛でられるのは別に良いが、別に自分の性別は限定されていない。そもそも性別という概念がない体なのである。だから今はかわいらしい姿を取っていても、俗に言うイケメン、の姿にだってなれるのだ。そんな存在にかわいいは似合うのか。そんなことを考えながら、何か指摘されるまではされるがままが吉と踏んだ。
「クッキーは好き?美味しいよ」
「すみません、食事の必要は……っむぐ」
「美味しいでしょ?」
「……はい」
歓迎されてるのか歓迎されていないのか。むしろ試されているような気がして居心地が悪い。あの二人は未だに話し込んでいるし、なんだか端々に聞こえる言葉に理解が追いつかない。聞いたことの無い喋り方や単語を使うのだな、とぼんやり考えた。
「……さってと、あの二人はまだ話してるん?」
「うん。もうお客のことなんか忘れてるだろうね」
「まぁ毒素やしな……おーいお二人さん、もう大丈夫やで」
はて、大丈夫とは?Aは首を傾げ、すぐにこちらへ向き直った二人に少し体を硬直させた。
「もうええんか?オスマン先生」
「おん。この子からは敵意なんて微塵も感じられへんし、そもそも触った感じ武器も持ってへん」
「触っ……ええわ、オスマンが判断したなら大丈夫やろ。ひとらんも一緒なら尚更」
「うん、この子から殺気感じないし、なんなら困惑しまくってたし」
「ふむ……そうか、ならばそうだな……」
なんだかあちら側だけで話が進んでいる。
考え込んだグルッペンを放って、カーキグリーンの軍服姿をした男がやってきた。
「さっきはごめんなあ星の子ちゃん、俺はトントン。こんなちっこくてかわゆい奴が危ないとか本当はそんな事ないんやけど、場所柄的に疑わんといけんのよ」
「は、はあ……いえ、気にしてはいませんが……」
「なら良かったわ」
屈んで話してくれるあたり、良心の塊なのだろう。トントンの言葉に気にしていないと返すと、にっこり笑って嬉しそうに頭を撫でられた。人間は頭を撫でるのが好きなのか?
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作者名:あまがし | 作成日時:2022年3月20日 21時